弁護士の雑記帳 – 東京中央法律事務所

東京中央法律事務所の公式ブログです

*

わきまえない

 

この記事は約 2 分で読めます。

公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗会長の、日本オリンピック委員会(JOC)臨時評議員会での不適切発言が問題になっています。
「女性が大勢いる理事会は時間がかかる」という趣旨の発言があったそうですが、その発言は「あいさつ」であったにもかかわらず、全体で40分にも及んだというのですから、誰が会議を長くしているのか、ブラックジョークとしか思えません。

そんな中で気になったのは、

私どもの組織委員会にも、女性は何人いますか、7人くらいおられますが、みんなわきまえておられます。みんな競技団体からのご出身で国際的に大きな場所を踏んでおられる方々ばかりです。ですからお話もきちんとした的を得た、そういうのが集約されて非常にわれわれ役立っています

という発言です。
わきまえているから、会議で発言せず、粛々とした進行に協力してもらえている、という文脈なのでしょうか。
あたかも、会議で発言することは、円滑な進行を妨げ、主催者の足を引っ張る、おとなげない、好ましくない態度とでも言わんとするかのようです。

おそらくこの発言は、女性だけに向けられたものではなく、自分より若い人、社会的地位の低い人、自分に同調しない人、そのくせ自分より才能のありそうな人等々、ひっくるめて言えば、自分から見て「生意気」な人に向けられたもので、とりあえず女性をあげつらったものなのでしょう。

ところで、「わきまえる」というのは、漢字で書くと、「弁える」と書きます。
弁護士の「弁」と同じ文字を使いますが、実は少し違います。

旧字体で書くと、弁えるの「弁」は「辨」ですが、弁護士の「弁」は「辯」なのです。

真ん中に刀を表す「刂」が入るのが、弁えるの「弁」。
一太刀で一刀両断にする様は、物事の違いを見分ける、物事の道理をよく知っているという意味を表すのにふさわしい文字ですね。
ちなみに、特許などを扱う弁理士の「弁」は「辨」の文字を用います。

かたや「辯」の方は、巧みにものを言うというような意味合いです。
いかにも「弁護士」の「辯」という印象ですが、取り方によっては、ちょっとイヤな感じもただよいます。

辨えている人は好ましいけれど、辯の立つヤツは気に入らない。

森会長基準だったら、弁護士はわきまえていない連中の筆頭格かもしれません。
しかし、その評価は甘んじて受けましょう。
忖度の意味でわきまえてばかりいたら仕事になりませんから。

 - 社会

  関連記事

友情と下心

 今年も新語・流行語大賞の候補がノミネートされる季節になりました。  候補に選ば …

長すぎる約束

原子力発電所の廃炉をすすめる過程で生み出される放射性廃棄物の処分について、昨日、 …

身の丈と体重

一昨年亡くなられた早坂暁氏の代表作として真っ先に挙げられるのは「夢千代日記」だと …

取り戻すべきもの

新型コロナウイルスの世界的な蔓延がなければ、今頃は東京パラリンピックが行われてい …

東電刑事裁判に思う

昨日、福島第一原子力発電所の事故をめぐり、東京電力の旧経営陣が業務上過失致死傷の …

特殊詐欺と弁護士

Wikipediaによれば、「オレオレ詐欺」の最初の検挙事犯は2003年のことだ …

ワクチン接種とマスク

新型コロナ対策では、高齢者を皮切りにワクチン接種が進められていますが、そのせいか …

野党はだらしない?

世間は参議院議員通常選挙の真っ最中です。 国政選挙としては2017年10月の衆議 …

噴出するセクハラ問題

財務事務次官によるセクハラ問題は、本人の辞任で事態が収束するどころか、今まで表に …

パンドラ

パンドラの箱の話をご存知ですか。 ギリシャ神話にある話で、全知全能の神ゼウスがパ …