弁護士の雑記帳 – 東京中央法律事務所

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聞きのがせない

 

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こんな言い回しを耳にしたことがあります。

「●●の候補を、もう国会に送らないでいただかなくて結構です」
「用心したほうがいいに越したことはありません」
「そうしたことは当方ではいたしかねません」

最初のはごく最近のニュースで見かけた、とある政党の代表が、衆院補選の応援演説の中で発言したものでした。
2番目のものは、地震を伝えるニュースの中で、余震に警戒を促す発言の中で出たものでした。
3つ目のものは、無理な注文を断ろうとする時に、時々聞こえてくる言い回しです。

いずれも、話し言葉として聞くときには、前後の文脈で、
「送らないでほしい」
「用心したほうがいいに決まっている」
「当方ではできません」
という意味だということは分かるのですが、冷静に思い返してみると、ちょっと意味が分からなくなってきます。

「送らないでほしい」と言うのはきつく聞こえるので、「いただきたい」「結構です」という丁寧でやや婉曲な表現を付け加えようとして、「送らないでいただきたい」と「(送って)いただかなくて結構です」が混じった結果、あんな言い回しになったのでしょう。

「用心したほうがいいに『決まっている』」と言うとちょっとエラそうに聞こえるので、「(用心するに)越したことはない」という言い方をしようとしたものの、「用心したほうがいいに」まで言ってしまった後だったので、かえって変なことになってしまったのでしょう。

「できません」という言い方はきつく聞こえて、特に顧客の要望に対する答えとしてはふさわしくないと思ったときに、「いたしかねます」というフレーズがよぎったものの、拒絶やお断りの気持ちを表す「~ません」という語尾は欠かせないと感じて、瞬時に両方を繋いでみたら、「やりかねない」という別の意味の言葉になってしまったという想定外の事態なのでしょう。

言い回しというのは、かなり無意識に口をついて出るものなので、普段から使い慣れている言い回しなら間違えることもなく、スムーズに言えるのですが、ちょっと格好つけて慣れない言い回しをしようとすると、こんなことになってしまいます。

自分が恥をかくだけならいいのですが、うっかり心無い言い回しになってしまって、知らぬ間に人を傷つけたりすることもあるかも知れません。

言葉は時に刃物になるといいます。
付け焼き刃を振り回すと怪我をしますよ、と。
自分も周りの人も。

やはり日頃の稽古が大切です。
自戒を込めて。

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