三段論法
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- 人間は死から逃れられない。(大前提)
- ソクラテスは人間である。(小前提)
- ゆえにソクラテスは死から逃れられない。(結論)
これは典型的な三段論法です。何も論理学を専門的に学ばなくても、三段論法をご存知でない方は多くないと思います。少なくとも、丁々発止の議論が求められる議会人の場合、これを知らなければ資質が疑われます。
ところが、昨日の衆議院予算委員会で、三段論法に異議を唱える強者が現れました。
立憲民主党の辻元清美議員が、安倍晋三後援会が主催者となって行われた「『桜を見る会』前夜祭」が開かれたANAインターコンチネンタルホテル東京(ANAホテル)に問い合わせた結果、過去7年間、
- 見積書や請求明細書を主催者側に発行しないケースはない。
- 個人・団体を問わず、貴ホテルの担当者が金額などを手書きし、宛名は空欄のまま領収書を発行したケースはない。
- ホテル主催ではない数百人規模のパーティー・宴会で、代金を主催者でなく参加者個人一人ひとりから、会費形式でホテルが受け取ることはない。
- 主催者が政治家および政治家関連の団体であることから、以上のような対応を変えたことはない。
という回答を得ていました。いわゆる「安倍方式」の宴会はANAホテルでは行っていないという回答です。同議員は、これをもとに安倍首相に質問をしたわけです。
この質問の組立ては、
- ANAホテルは「安倍方式」での宴会は行っていない(大前提)
- 「前夜祭」がANAホテルで行われた宴会である(小前提)
- ゆえに「前夜祭」は「安倍方式」で行われてない(結論)
という三段論法になっていたわけです。
これに対して首相の答弁はこうでした。「ANAホテルの回答は一般論に過ぎないのだ」(要旨)と。
予算委員会の休憩中に、安倍事務所がANAホテルに問い合わせたところ、「一般論を回答した」(要旨)との回答を得たとも言っていたようですが、マスコミ等がANAホテルに問い合わせると、「そのような回答はしていない」という回答だったとも報じられています。
それはそうでしょう。
そもそも、ANAホテルの回答は一般論ではなく、実際にANAホテルで過去に行われたケースについての回答であって、実績を言うものです。「一般論だ」という反論は筋違いです。
首相がどうしても反論するというのならば、
- ANAホテルがウソを言っている(大前提に対する抗弁)
- ANAホテルで前夜祭を開いてはいない(小前提に対する抗弁)
- 前夜祭はパーティーや宴会ではない(同上)
とでも言うしかなかったのではないかと思います。
どれも筋の悪い反論ですがね。
こんな時に、弁護士として相談されたら、いっそ、頭を下げてお詫びする、という選択肢を示すかも知れません。予算審議が正常化するなら、たとえその地位を失うことになっても本望だくらいの言葉を残して、潔い散り際を示すのもまたひとつかと。いかがでしょうか。
おっと、刑事訴追のリスクもありましたね。
てっきりそのための検察庁人事だと思いこんでいました。
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