交通事故を他人事にしない
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一昨日、大津市での交通事故のニュースが飛び込んできました。
わずか2歳のお子様を亡くされたご遺族の悲しみは察するに余りあります。
幼くして亡くなられたお子様のご冥福と、怪我をされた方々の1日も早い快復をお祈りします。
この事故の状況を聞いたときに、ヒヤリとした記憶がよみがえりました。
私自身、似たような状況に直面した経験があったのです。
車を運転して交差点を直進しようとしている時に、突然対向車線の右折車が曲がってきたのです。瞬間的に急ブレーキを踏みながら、衝突を避けるためにハンドルを左に切ったのですが、その先には、今回の事故とまったく同じように、信号待ちをしている歩行者がいました。
幸いブレーキも間に合い、歩行者への接触も、車同士の衝突もなく停車できたのですが、事故が発生しなかったのは全く幸運だったとしか言いようがありません。
なぜそんなことが起こったのかといえば、私の前にも直進車が続いていたため、対向車線の右折車は、ずっと待たされてイライラしていたのでしょう。わずかに車間が空いたとみて、右折を強行したようなのです。
右折専用信号もなかったので、このままだといつまでも曲がれない、という焦りが昂じていたのかも知れません。
そんな運転者の心理も理解できます。自分の行く手を阻まれているのは、いくら交通ルールとはいえ、好意的な状況であろうはずもありません。
もちろん、理解できるということと、容認できるということは違いますが、そんなちょっとした心理的なささくれが大きな事故につながることもあるのではないでしょうか。
この経験以来、たとえ青信号の交差点を直進する時でも、対向車線に右折待ちの車がいると、「まさか曲がって来ないよな」という警戒心が頭の片隅をよぎるようになりました。
自分がどんなに注意していても発生する事故はあるとは思いますが、万が一の可能性を考えているだけでも、咄嗟の対応が違うのではないかと思います。
信号待ちをしている歩行者にとって、目の前で車同士の事故が起こって、それに巻き込まれるリスクは、非常に低いとはいえ、皆無ではありません。
今回の事故でも、事故に巻き込まれた保育園児や保育士に法的責任という意味での過失は全くありませんが、こんな不幸な事故に遭う可能性もあることを知っておくだけでも意味があると思います。
元NHKアナウンサーの内藤裕子さんは、帰宅途中、歩道上で信号待ちをしている時に、車道上の車とオートバイの事故に巻き込まれて重傷を負ったことがあったそうです。幸い仕事にも復帰され、現在はフリーアナウンサーとして活動されているようです。
またこれは創作の世界ですが、精神科医で作家の加賀乙彦さんの著作に、「生きている心臓」という、脳死認定と心臓移植を取り扱った小説があります。この小説の中で、精神科教授の天木有作が脳死に陥ったのは、やはり歩道を歩いていたところに、車道上の交通事故で飛ばされた人と衝突したことが原因だったように思います(やや記憶が曖昧ですが)。
人はいつ何時(なんどき)不慮の事故に巻き込まれるか分かりません。
しかし、そのリスクを少しでも減らすために、危険に対する想像力を研ぎ澄ませておきたいものです。
今回の不幸な事故も、「被害者がかわいそう」とか、「加害者はけしからん」とか言うだけではしょせん他人事にとどまってしまいますが、私たちの身近でも起こりうる事故として、自分自身の心にとどめておくことが大切であるように思います。
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