弁護士の雑記帳 – 東京中央法律事務所

東京中央法律事務所の公式ブログです

*

批判は失敬?

 

この記事は約 4 分で読めます。

昨日の衆議院予算委員会で、こんなやりとりがありました。

小川淳也衆議院議員(立憲民主党)
トランプ氏なんですが、中距離核戦略全廃条約から離脱を打ち出しています。
イランの核合意から一方的に離脱を表明しました。
エルサレムに大使館を移転して中東を混乱させてます。
宇宙軍創設でこれから宇宙の、緊張も高めるでしょう。
パリ協定から離脱しました。地球温暖化の脅威はこのトランプ政権によって大いに高まると思います。
米中との貿易戦争。自国第一主義。排外主義。壁の建設。
どれひとつとってもノーベル平和賞に推薦するなんてことはありえないし、日本国として恥ずかしいことだと思いますが、総理、いかがですか。

安倍晋三内閣総理大臣
(ま)今、(あま)同盟国の大統領に対して口を極めて、(えー)批判をされた、わけでございますが、(あ)米国は(あ)日本国にとって唯一の、(あ)同盟国、であり、その国の大統領に対しては一定の敬意を払うべきであろうと、私はこのように、(え)思うわけで、(えー)ございます。(えー、ま)御党も、(ま)政権を、(おー)奪取しようと、(お)考えて、いるので「あれば」ですね。(あのほー、)その上で申し上げますが、(あのー、)ノーベル平和賞について、ノーベル委員会はですね推薦者と(ひす、)被推薦者を50年間は明らかにしないということとして、いる、わけでございまして、この考え方を私も、(お)尊重して、(え)おりますので、私からコメントすることは、差し控えたいと、(えー)こう考えて、(えー)おります。1

(2019年2月18日衆議院予算委員会)

ドナルド・トランプ米国大統領を、安倍首相がノーベル平和賞に推薦したというニュース(これ自体はトランプ氏自身の発言で、真偽のほどは定かではありませんが)を受けての質問だったわけですが、安倍首相の答弁には大変違和感を覚えました。

「同盟国の大統領に対して敬意を払うべき」というのは「口を極めて批判した」ことを論難しているもので、どうやら
「今の批判は失敬だ。口を慎め。」
ということのようです。しかも、
「政権を奪取しようと考えているのであれば」
という条件付きです。
これ、まとめて言うと、
「同盟国の大統領を批判するのは失敬で、そんな政党は政権を担当することはできないぞ。」
ということです。

報道されているところによれば、安倍首相がトランプ大統領をノーベル平和賞に推薦した理由は、北朝鮮のミサイルによる攻撃のおそれを取り除いたということのようですが、小川議員の指摘する国際的な緊張を助長する動きがトランプ政権で行われていることは事実で、この点に目をつぶっていいのかという指摘は全くもっともです。
なにもアメリカに内政干渉をしようというのではなく、そういう非難が向けられている大統領について、ノーベル平和賞の推薦状まで送るような媚びへつらいをするのは、恥ずかしいじゃないかというわけですから。

これに対して、安倍首相が、
「推薦の事実の有無についてはコメントできないが、北朝鮮問題についてトランプ大統領が果たした役割は大きく、高く評価されるべきもので、小川委員の指摘は事実の一部しか見ないものだ」
と答弁したのであればともかく、
「あれこれと事実を摘示して批判するのは失敬だ」
というのは全く見当違いな答えで、あげく、
「そんなことばかり言っているとお宅の政党は(選挙に勝って)政権を取ることはできない」
といういつもの調子で、あたかも権力者を批判するのはみっともないことのような印象を与えようとする態度は、控え目に言ってもお粗末というほかありません。

どうも安倍首相は、自分自身や友人知人に批判が向けられると、質問に正面から答えずに、
「失礼だ」
とか、
「そんなわけないでしょう」
とか、
「本当だったらどうするんですか」
とか、
「そんなこと言ってるから選挙に負けるんですよ」
とか、稚拙な答弁になってしまう傾向があるようです。
世の中を敵と味方に分けて捉えて、味方に対する攻撃には感情的に反応する、敵に対してはしつこいくらいにさげすむ。
彼の言う「美しい国」とは仲間内だけに存在するのかも知れません。


このやりとりで思い出したのが、作家の橘玲さんの「善人は報われず、傲慢でおべっかを使う嫌な奴ほど出世する」という記事でした。

アメリカの研究者が調べたところ、職場では仕事を頑張るより上司の評価をコントロールしたほうが、より高い勤務評価を得ているというのです。
「上司を機嫌よくさせておけば、実際の仕事ぶりはあまり重要ではない。また逆に上司の機嫌を損ねたら、どんなに仕事で業績をあげても事態は好転しない」
とは、なんとおそろしいことでしょうか。

もっともかしこい「働き方改革」はこういうことだということを、安倍首相自ら実践したということなのでしょうか。
もっとも、アメリカの大統領が上司に当たるのだとすれば、ですけれど。


1. 録画からできるだけ忠実に反訳したものです。読みにくいとすれば、話者に原因がありますので、あしからずご了解ください。

 - 社会

  関連記事

人心の一新

明後日には内閣の改造が行われるそうです。 この数か月で一気に落ち込んだ内閣支持率 …

末はハカセか

「末は博士か大臣か」などと子供の将来を期待することができた時代は、きっと子供にと …

書き換える罪

刑法159条は私文書偽造・変造罪を定めています。 (私文書偽造等) 第159条 …

朝三暮四

「朝三暮四」という故事成語はご存知ですね。 中国は春秋時代の宋に狙公という人がい …

後悔先に立たず

「イギリス、EUやめるってよ」 というタイトルのブログが乱立するだろうなあと思っ …

まだ大丈夫?

西日本を中心とした豪雨被害に遭われた皆様、今も避難生活を余儀なくされている皆様に …

長すぎる約束

原子力発電所の廃炉をすすめる過程で生み出される放射性廃棄物の処分について、昨日、 …

地球儀外交

  もはや旧聞に属する話ですが、安倍総理は、政権交代を果たした後の20 …

友情と下心

 今年も新語・流行語大賞の候補がノミネートされる季節になりました。  候補に選ば …

2つのマクドナルド理論

アメリカのジャーナリスト、トーマス・フリードマンが提唱した外交理論に、「マクドナ …