バベルの塔
この記事は約 2 分で読めます。

現在、上野の東京都美術館で「ブリューゲル『バベルの塔』展」が開催されています。
ブリューゲルのバベルの塔といえば、ウィーンの美術史美術館に所蔵されているものの方が有名かも知れませんが、今回来日しているのは、オランダ・ロッテルダムにあるボイマンス美術館所蔵のものです。
ちなみに、上の写真は、東京都美術館の裏手、東京芸術大学の構内で行われている、「『Study of BABEL』展」のものです。東京都美術館の展覧会の関連企画として開催されているもので、ブリューゲルのバベルの塔の立体モデルが展示されています。写真に写っているのは昼のバベルの塔で、裏に回ると夜のバベルの塔が再現されています。
絵画自体も立体感のある細密なものですが、実際に立体化されたものには、また違った印象を受けました。
ご存知の方も多いと思いますが、バベルの塔というのは、旧約聖書の「創世記」に登場する巨大な塔で、人間が築き始めた塔がやがて天まで届くほどの高さに達したところ、神が人間たちの間で交わされている言葉を、お互いに通じない別々の言葉に変えてしまったため、塔の建設が立ち行かなくなり、ついに塔は放棄されて、人々は世界各地に散らばっていった、というものです。
神の領域をもおびやかすほどの技術を身に付けた人類も、共通の言葉を失うことで組織があっけなく崩壊してしまう。
バベルの塔が廃墟となったのは、技術不足でも、材料不足でもなく、ましてや神の手によって壊されたのでもなく、ただ人間がお互いの言っていることを理解できなくなっただけというのは、現代にも通じる教訓であるように思われます。
お互いに意味は通じているはずの日本語を使って議論しているにもかかわらず、ほとんどかみ合っているようには思えない国会での最近の議論を見ていると、国会議事堂が、いや、この国全体がバベルの塔になりつつあるように思えてならないのです。
関連記事
-
-
桜の季節とともに
東京は桜の季節です。 事務所からほど近い新宿御苑は、毎年首相が主催する「桜を見る …
-
-
青海(あおみ)と青梅(おうめ)
週末の出来事だったようですが、お台場「ヴィーナスフォート」で行われるアイドルフェ …
-
-
道半ば
日本では大型連休中だった5月5日、世界保健機関(WHO)が新型コロ …
-
-
慰霊の日
東京にいると忘れてしまったり、そもそも知らないという人も多いと思いますが、今日6 …
-
-
老いと運転
江戸時代の禅僧、仙厓義梵といえば、「○△□図」や「指月布袋図」などのユルい禅画で …
-
-
21世紀の子どもたち
先日、母校の高校で授業をしてきました。 「総合的な学習の時間」の一環として、母校 …
-
-
10年ひと昔
今からちょうど10年前、東京中央法律事務所は四ッ谷から現在の新宿御苑前に移転しま …
-
-
堪え忍んでめざすもの
終戦の日です。 以前の記事でも書きましたが、8月15日が終戦の日とされているのは …
-
-
あけましておめでとうございます
あけましておめでとうございます 新年は南天に鶏を選んでみました。 南天は「難」が …
-
-
NHK「戦後史証言プロジェクト」
やや古いソースなので恐縮ですが、NHK「戦後史証言プロジェクト」で、当事務所の新 …
- PREV
- 復興大臣の失言と本音
- NEXT
- 痛くもない腹を探られる
