堪え忍んでめざすもの
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終戦の日です。
以前の記事でも書きましたが、8月15日が終戦の日とされているのは、その日に昭和天皇によって終戦詔書が読み上げられ、日本の降伏が国民に公表されたためです。
ラジオ放送された、いわゆる「玉音放送」です。
玉音放送の原文である終戦詔書は、国立公文書館のデジタルアーカイブでも見ることができます。
文語体で読みにくいのですが、「玉音放送 現代語訳」でネット検索すると、いろいろな訳文が出てくるので、一度ご覧ください。
大まかに言うと、ポツダム宣言を受諾せざるをえなくなったことについての弁解と、国民に対する慰謝、鼓舞激励です。
無条件降伏を決めたとはいえ、当時まだ大日本帝国憲法は生きていて、天皇が赤子たる臣民に対して発する「おことば」ですから、現代の感覚では少々引っかかる部分もありますが、時代背景を踏まえた上で敗軍の将のスピーチとして読めば、絶妙な文章として理解できます。
玉音放送といえば、必ずといっていいほど紹介されるのが、
堪ヘ難キヲ堪ヘ 忍ヒ難キヲ忍ヒ 以テ万世ノ為ニ太平ヲ開カムト欲ス
の部分でしょう。
当時のラジオ放送では雑音が多すぎて、この部分くらいしか聞き取れなかったという説もありますが、特に、
堪ヘ難キヲ堪ヘ 忍ヒ難キヲ忍ヒ
のフレーズは、玉音放送の中のフレーズを超えて、日常会話の中でも(ややパロディー的な意味合いを込めて)どちらかというと、我慢や辛抱を強いる、あるいは強いられる時に使われることが多いように思います。
正直言うと、このフレーズが記憶に残りすぎて、それに続く部分の意味を考えてみることはありませんでした。
以テ万世ノ為ニ太平ヲ開カムト欲ス
と言われても、文字に引きずられて「『万世』一系」とか「『太平』洋戦争『開』戦」とか、ついついそっちの方のイメージを抱いてしまい、「なんだ、無条件降伏と言いながら、国体護持、富国強兵はあきらめていないんだな。堪え忍んで、いずれの日か復讐してやるくらいのつもりか?」くらいに思っていました。
ところが、今回現代語訳を見て、ちょっとイメージが変わりました。
堪え難くまた忍び難い思いをこらえ、永遠に続く未来のために平和な世を切り開こうと思う。
敗戦の事実を受け入れることで、平和な未来を築いていこう。
昭和天皇の意思なのか、原稿を書いた官僚の考えなのか分かりませんが、平和国家への出発点が玉音放送に仕込まれていたようです。
その後に公布・施行された新憲法に平和主義がうたわれたのは、GHQの押し付けなんかではなかったんですね。
岸田首相は、今日の戦没者追悼式での式辞で、戦争の惨禍を二度と繰り返さないという誓いを継承すると述べたそうですが、つい先日も憲法への自衛隊の明記が憲法改正の論点だとしたばかりです。昨日自民党総裁選への不出馬を明らかにした岸田首相。不戦の誓いは、選挙戦のことだけなのかも知れません。
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