弁護士の雑記帳 – 東京中央法律事務所

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国の代表者

 

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今日、新たな内閣が発足しました。
岸田文雄氏が内閣総理大臣としては100代目に当たるというので、総理大臣が100人目なのかと思いきや、天皇による任命ごとに1代と数えるようで、人数で数えると64人目なのだそうです。
日本国憲法施行前の総理大臣経験者は32人でしたから(敗戦後の幣原喜重郎、吉田茂を含みます)、現憲法下の総理大臣がようやく同じ数になったとも言えます。

さて、内閣総理大臣の最初の仕事は組閣人事です。
今回は昨日までにすっかり内定者が報道されていたので、ニュースにも新鮮味がありませんが、私たち弁護士が仕事をする上で、忘れてならないのが法務大臣の名前です。

なぜか。

ちなみに、明治憲法下では司法省が弁護士や弁護士会の監督権を掌握していましたが、現在はそのようなことはありません。ですから、法務大臣の交代は、業界のトップの交替を意味するわけではありません。

むしろ話は逆で、国を訴えるときに、名目上法務大臣を相手にすることになっているからです。行政府の長は内閣総理大臣ですが、国が当事者などになる裁判において国を代表するのは法務大臣ということになっているのです。
国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律」という法律があって、その第1条に、

国を当事者又は参加人とする訴訟については、法務大臣が、国を代表する。

と定められているのです。
ですから、国を相手取って損害賠償請求訴訟を提起するような場合、訴状には、

被告 国
代表者法務大臣 法務太郎

と書くことになります。

いや、どうしても総理大臣を相手に訴えを起こしたい、と思ったとしても、裁判では総理大臣が国の代表者ではないので認められません。
もっとも、法務大臣が国を代表するといっても、裁判に出てくるのは指定代理人として選任された検事(検察官出身者だけでなく、裁判官出身者も多くいます)や関係省庁の役人なので、法務大臣が法廷に出廷するわけではないのですが、名前くらい覚えておかないといけませんね。

で、新法相は、・・・。
あとで調べましょう。

法務大臣の就任会見というと、どうしても死刑の執行命令に関する見解が問われることが多いのですが、継続中の様々な訴訟についての考えなどもしっかり聞いてほしいところです。

ところで、Wikipediaによると、戦後の法務大臣経験者で内閣総理大臣に就任した人物は皆無なのだとか(空席時の臨時代理を除く)。
何というか、そういうことなんですかねえ。

 - 社会

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