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定年後再雇用の賃金格差は違法 東京地裁判決

 

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 5月13日、定年後再雇用された労働者が定年前と同じ賃金を支払うよう勤務先の会社に求めた訴訟で、東京地裁は、労働者側の訴えを認め、会社に対して、定年前の賃金との差額の支払いを命じる判決を下しました。

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 労働契約法20条は有期契約労働者(いわゆる非正規労働者)と無期契約労働者(いわゆる正社員)との間で不合理な差別待遇をすることを禁じています。
 現在、郵政東日本裁判やメトロコマース裁判など労働契約法20条を根拠に賃金格差の是正を求める裁判が多数起こされていますが、この度の東京地裁判決は賃金格差について労働契約法20条違反を認めた初めての裁判例であり、その意味で労働者にとっても使用者にとっても今後に大きな影響を及ぼす画期的な判決ということができます。


 ところで、わが国の多くの企業では、年功序列賃金を維持しつつ賃金コストを抑制するために定年制が広く採用されています。他方で、従前60歳であった公的年金の支給開始年齢が引き上げられたことから、定年退職した人の年金支給開始までの間の収入をどうやって確保するのかが問題となります。そこで、高齢者雇用安定法は、企業に対して、定年の廃止や継続雇用制度の導入などによって高齢者の雇用を確保する措置をとることを義務づけました。その結果、定年退職した従業員を嘱託社員などとして従前より低い賃金で再雇用することは広く行われています。

 東京地裁判決も、定年後の再雇用者の賃金を定年前から引き下げることそれ自体を直ちに違法としたものではなく、正社員と同じ業務に従事させながら賃金水準だけを引き下げることは不合理であり違法であるとしました。つまり、賃金コスト圧縮だけを目的として定年後再雇用制度を用いることは許されないということです。

 現在、同一の仕事に従事する労働者には、同一水準の賃金が支払われるべきだとする「同一労働同一賃金」の考え方は広く主張され、安倍首相さえもその実現を目指すと謳っています(ただし、安倍政権は多くの派遣労働者の反対の声を押し切り、派遣労働を事実上自由化する労働者派遣法の改正を強行するなどしており全く説得力がありません。むしろ、正社員の賃金水準を非正規労働者の賃金水準にまで引き下げる理由にされかねませんので注意が必要です)。
 この度の東京地裁判決はこうした同一労働同一賃金の考え方が反映されているものと評価することができます。

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