堪え忍んでめざすもの
この記事は約 3 分で読めます。

終戦の日です。
以前の記事でも書きましたが、8月15日が終戦の日とされているのは、その日に昭和天皇によって終戦詔書が読み上げられ、日本の降伏が国民に公表されたためです。
ラジオ放送された、いわゆる「玉音放送」です。
玉音放送の原文である終戦詔書は、国立公文書館のデジタルアーカイブでも見ることができます。
文語体で読みにくいのですが、「玉音放送 現代語訳」でネット検索すると、いろいろな訳文が出てくるので、一度ご覧ください。
大まかに言うと、ポツダム宣言を受諾せざるをえなくなったことについての弁解と、国民に対する慰謝、鼓舞激励です。
無条件降伏を決めたとはいえ、当時まだ大日本帝国憲法は生きていて、天皇が赤子たる臣民に対して発する「おことば」ですから、現代の感覚では少々引っかかる部分もありますが、時代背景を踏まえた上で敗軍の将のスピーチとして読めば、絶妙な文章として理解できます。
玉音放送といえば、必ずといっていいほど紹介されるのが、
堪ヘ難キヲ堪ヘ 忍ヒ難キヲ忍ヒ 以テ万世ノ為ニ太平ヲ開カムト欲ス
の部分でしょう。
当時のラジオ放送では雑音が多すぎて、この部分くらいしか聞き取れなかったという説もありますが、特に、
堪ヘ難キヲ堪ヘ 忍ヒ難キヲ忍ヒ
のフレーズは、玉音放送の中のフレーズを超えて、日常会話の中でも(ややパロディー的な意味合いを込めて)どちらかというと、我慢や辛抱を強いる、あるいは強いられる時に使われることが多いように思います。
正直言うと、このフレーズが記憶に残りすぎて、それに続く部分の意味を考えてみることはありませんでした。
以テ万世ノ為ニ太平ヲ開カムト欲ス
と言われても、文字に引きずられて「『万世』一系」とか「『太平』洋戦争『開』戦」とか、ついついそっちの方のイメージを抱いてしまい、「なんだ、無条件降伏と言いながら、国体護持、富国強兵はあきらめていないんだな。堪え忍んで、いずれの日か復讐してやるくらいのつもりか?」くらいに思っていました。
ところが、今回現代語訳を見て、ちょっとイメージが変わりました。
堪え難くまた忍び難い思いをこらえ、永遠に続く未来のために平和な世を切り開こうと思う。
敗戦の事実を受け入れることで、平和な未来を築いていこう。
昭和天皇の意思なのか、原稿を書いた官僚の考えなのか分かりませんが、平和国家への出発点が玉音放送に仕込まれていたようです。
その後に公布・施行された新憲法に平和主義がうたわれたのは、GHQの押し付けなんかではなかったんですね。
岸田首相は、今日の戦没者追悼式での式辞で、戦争の惨禍を二度と繰り返さないという誓いを継承すると述べたそうですが、つい先日も憲法への自衛隊の明記が憲法改正の論点だとしたばかりです。昨日自民党総裁選への不出馬を明らかにした岸田首相。不戦の誓いは、選挙戦のことだけなのかも知れません。
関連記事
-
-
NHK「戦後史証言プロジェクト」
やや古いソースなので恐縮ですが、NHK「戦後史証言プロジェクト」で、当事務所の新 …
-
-
猛暑の夏
気が付けばもう8月も最終日ですね。 今年の夏はとにかく暑いの一言に尽きます。 昨 …
-
-
明日から下半期
早いものでもう今年も半分終わりです。 明日からは下半期ですが、もうすぐ新しいもの …
-
-
よいお年をお迎えください
今年も1年お疲れさまでした。 今年は新年早々から災害に見舞われ、被災地のみなさま …
-
-
夏の終わりに
前任の総理大臣が退陣表明をしてから、早いものでもう1年が経過しました。 あれから …
-
-
迷惑メールの一例
こんな迷惑メールが届きました。 架空請求の類であることは間違いないのですが、同じ …
-
-
事務所の目印
私たちの事務所が入居している大台ビルは、1階にはテナントスペースがないので、ご …
-
-
あけましておめでとうございます
あけましておめでとうございます 今年は戌年(いぬどし)です。 「戌」の文字は、武 …
-
-
14年前の使い回し
一昨年のハロウィンの夜、京王線内で起きた刺傷事件について、今日行わ …
-
-
73年前の夏
今日は言うまでもなく終戦記念日です。73年前の1945(昭和20)年8月15日正 …
