弁護士の雑記帳 – 東京中央法律事務所

東京中央法律事務所の公式ブログです

*

方広寺の鐘

 

この記事は約 2 分で読めます。

どうやらそろそろ収束が見えてきたようです。

もちろん新型コロナウイルス・オミクロン株の流行のことではありません。
菅直人元首相による「ヒットラーを思い起こす」ツイートに端を発する一連のニュースのことです。

元のツイートは「(略)主張は別として弁舌の巧みさでは第一次世界大戦後の混乱するドイツで政権を取った当時のヒットラーを思い起こす。」というもので、大阪府知事や大阪市長を務めた橋下徹氏をはじめとする「維新」の弁舌の巧みさを指摘するものですが、かの独裁者を引き合いに出すことで、おそらくは、その巧みさに警戒すべしという警鐘こそ本音だったのでしょう。
そのように受け止めた方が大半だろうと思います。

これに対して維新から抗議の声が上がったところまでは誰もが予想したところですが、ツイート主よりも所属政党である立憲民主党に対する抗議になってしまったあたりから様相が怪しくなり、「ヒトラーへ重ね合わす批判は国際的にご法度」という独自ルールに根拠がないことが分かりはじめ、過去のヒトラー発言をスルーしていたことなどとの矛盾がささやかれ、徐々に当事者間では矛を収める雰囲気になってきて、今ではネットや一部マスコミなどで、やや見当違いな方向の論争になっているのが現状と思われます。

そうした状況ですので、当該ツイートの内容の是非について今からコメントすることは控えますが、何となくアレに似ているなと思いました。

大坂冬の陣に発展した「方広寺鐘銘事件」です。

時は慶長19年(1614年)、豊臣秀頼の命により慶長伏見地震から復興した京都・方広寺の梵鐘の銘文に「国家安康」「君臣豊楽」の文字が刻まれていることを聞きつけた徳川家康は、家康の名を分断し、豊臣が栄えることを表す呪詛であるとして、豊臣攻めの口実としたというアレです。
家康の言い掛かりだったと教わった記憶ですが、近年の研究ではそうでもないという説もあるとか。

もちろん、維新の幹部の方々がこの方広寺事件を念頭に、今回の「ヒットラー」ツイートに声を上げたのかどうかは分かりません。
でも、大阪府知事・大阪市長のW選挙の時だったか、都構想についての住民投票の時だったか、大阪夏の陣とか冬の陣とか言っていたような記憶もあるので、件のツイートを槍玉に挙げて立憲民主党攻撃をしはじめた様子からは、どうしても方広寺事件を想起してしまいます。

そういえばその当時の家康はすでに秀忠に将軍の座を譲った後だったというのも、何となく似てますね。

結果は似てませんが。

 - 社会

  関連記事

初めての贈り物

名前は子供への最初の贈り物。 そんな言葉を耳にしたことがあります。 でもその一方 …

豊洲にしてもオリンピックにしても

連日報道されている豊洲新市場問題ですが、昨日の報道では、地下水から環境基準を超え …

人心の一新

明後日には内閣の改造が行われるそうです。 この数か月で一気に落ち込んだ内閣支持率 …

レガシーの活用

参院選の終盤、安倍元首相が凶弾に倒れるという衝撃的なニュースが飛び込んできてから …

刺客

物騒なタイトルで失礼いたします。 よく、政治と宗教と野球の話は注意した方がいいと …

反社の定義

昨日のニュースですが、政府が「反社会的勢力」の定義について「その時々の社会情勢に …

英国が欧州連合離脱へ

正直、ほとんどの人はこの国民投票の結果を予想していなかったのではないかと思います …

刑事手続原則と一般国民感情

 ここ最近ネットやワイドショーを賑わせている話題の一つに、東名高速路上でワゴン車 …

噴出するセクハラ問題

財務事務次官によるセクハラ問題は、本人の辞任で事態が収束するどころか、今まで表に …

迫る改元

裁判所では受理した事件(案件)ごとに「事件番号」といわれる固有の番号を振って事件 …