憲法第22条(居住、移転・職業選択の自由)
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第22条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。
憲法22条は、1項において居住・移転の自由および職業選択の自由を、2項において外国移住の自由、国籍離脱の自由を定めています。
居住・移転の自由とは、その名のとおり自分がどこに住むのか、どこに行くのかについて自分の意思で決めることができるというものです。移住だけでなく、旅行の自由もこの中に含まれます。ちなみに、海外旅行については2項において外国移住の自由が保障されていることの前提として権利として保障されています。国籍離脱の自由とはその名のとおりですが、国際法上無国籍の者を奨励しないことから、外国籍を取得した者のみに国籍離脱を認める制度となっています。
22条の中でも特に皆さんに身近なものは、職業選択の自由でしょう。
職業選択の自由とは、自分がどのような職業に就くかを自由に決められるだけでなく、自身が選択した職業に基づき営業活動をする自由(営業の自由)があることを保障しています。
営業の自由については当たり前ではないかと思われる方も多いと思います。しかし、いくら職業を自由に選ぶことができるとしても、たとえば広報をするのは禁止、お店をもつのは禁止、とされては職業を自由に選べるという意味がなくなりますよね。22条1項はそのような職業を遂行するのに必要な活動をも保障することで、自由に仕事を選ぶことの出来る権利を保障しているということなのです。
職業選択の自由は、従前は19条の信教の自由、20条の思想・良心の自由、21条1項の表現の自由のような精神的自由と比較され経済的自由を定めたものとされ、その合憲性(とある制度や行政上の措置が憲法に触れるかどうか)についても緩やかな基準で判断すべき、とされていました。
その理由としては2点あります。
1点目は、22条1項にはこれまで紹介してきた精神的自由の規定にはなかった「公共の福祉に反しない限り」という文言がついていること、もう一つは、そもそも経済的自由についてはその制限について違憲とするハードルが精神的自由よりも高いと考えられていたことにあります。
すなわち、精神的自由が人がどのような思想を持っているか(宗教を含む)、それをどの様に表現するかということを司っており、それを制限することが一旦認められるとそのことについて反発する機会すら失われてしまうのに対し、経済的自由は端的に言えばどうやってお金を稼ぐかということなのだから、精神的自由の制限に比べてそれが制限されることによる危険性が少ない、という考え方です。
この考え方を、精神的自由と経済的自由とで憲法に反するかどうかの判断基準が異なるということで、二重の基準、と呼びます。職業選択の自由については、そのような考え方のもと、そもそも精神的自由よりも緩やかに合憲性を検討すべきであると共に、その規制の目的が社会経済活動を活性化させるような積極的な行政目的のためのものなのか(積極目的)、それとも病気や災害などを防止するため(消極目的)なのか、という規制をもたらす行政政策の目的に応じてその政策の合憲性を判断すべきであると考えられてきました(規制目的二分論)。
しかし、近年では、職業選択の自由も、自分がどのような職業を選ぶのか、どのようにその職業を遂行(営業)するのかも人の大事な精神的活動の一部だろうということから一概に上述のような基準で判断すべきではないという議論も出始め、職業選択(営業)の自由に対する制限がどの程度強度なものか、それが規制の目的を達成するためにどの程度効果を有するものなのか、など、単純に緩やかな基準で判断すべきではない、という流れが出来ています。
(仲村渠 桃)
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