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刑の一部執行猶予制度

 

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6月になりました。
もうすぐ梅雨のシーズンですが、ジメジメとイヤな季節だと思うのか、植物の緑も濃くなって、夏の準備をしていると思うのか、心の持ちようで見える景色も少しだけ違いそうです。

さて、みなさんには馴染みが薄いとは思いますが、6月1日から新しい制度がスタートしました。
「刑の一部執行猶予制度」です。
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有罪判決で懲役刑になっても、執行猶予がつけば、ひとまずは刑務所に入らなくてすむというのは、ご存知の方も多いと思います。一部執行猶予というのは、懲役刑の全部を猶予するのではなく、例えば3年の懲役刑のうち、半分の1年半は刑務所に入ってもらいますが、残りの1年半は猶予、つまり様子を見ますよ、というものです。

薬物事犯などは、初犯では執行猶予になることが多かったのですが、再犯率が高いことから、初犯でも刑務所に入れるべきではないかという意見が言われてきました。しかし、社会から切り離されることが更生を妨げるという面もあります。そこで、刑務所に入ることによる制裁や更生プログラムを受けさせつつ、社会復帰を促して再犯防止を図るために、一部執行猶予という判決ができるように法律を改めたのです。

早速今日、千葉地裁で一部執行猶予判決が出されたそうです。やはり覚せい剤事犯だったようです。この制度がうまく機能していけばいいのですが、成果が現れるのは数年先ですので、果たしてどうなるでしょうか。

しかし、この「刑の一部執行猶予制度」の導入を検討していたのが、法務省内に設置された「法制審議会・被収容人員適正化方策に関する部会」だと聞くと、もともとの目的は違うところにあったのかと気が付くわけです。舞台裏を見てしまった気分ですね。

もっとも、新しい制度を生かすも殺すも、運用する人間次第です。自戒を込めてそう思います。

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