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侮辱罪厳罰化

 

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通常国会が閉幕しました。

今国会では改正刑法が可決成立し、侮辱罪の法定刑が引き上げられることとなりました。
侮辱罪の法定刑はこれまで「拘留又は科料」とされ(刑法231条)、拘留は1日以上30日未満(同16条)、科料は1,000円以上10,000円未満(同17条)とされていましたので、刑法に定めされている犯罪でもっとも軽い法定刑となっていました。

これが、今般の刑法改正により、「1年以下の懲役若しくは禁錮又は30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」が法定刑となり、さらにこの法定刑引き上げの結果、教唆犯(犯罪をそそのかすこと)や幇助犯(犯罪の手伝いをすること)も処罰の対象になります(刑法64条)。

この、いわゆる「侮辱罪厳罰化」はインターネット上での誹謗中傷に対応したものとされています。
お互いに顔の見えないネット上で繰り広げられる人格攻撃は、その広がりも無限であるため、被害者に深刻な精神的苦痛を与え、時に取り返しのつかない事態に発展することもあります。
これ以上、インターネットを無法地帯にするわけにはいかないという立法事実があったわけです(もちろん、インターネット上だけの問題ではありません)。

他方で、侮辱罪を厳罰化することの問題も指摘されています。
侮辱罪(刑法231条)と対比されるのが名誉毀損罪(同230条)ですが、名誉毀損とは「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損」することで、これに対して侮辱は「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱」することとされており、どこまでが犯罪になるのか必ずしもはっきりしません。
批判や皮肉さえも検挙の対象になってしまうおそれもあります。
しかも、その教唆や幇助まで処罰の対象となるのですから、自分さえ気を付けていれば、というものでは済まないかも知れません。

表現の自由(憲法20条)との関係を考えると事態は深刻です。
警察の運用次第で、「物言えば唇寒し」を地で行く、萎縮社会の出来上がりです。

改正刑法の施行から3年後に、表現の自由を不当に制約していないか検証するとした検討条項の付則が設けられましたが、「本当にこれでよかったのか」と検証することも憚られるのが萎縮効果ですので、担保になっているのかははなはだ心許ないところです。 

 

ところで、侮辱罪というと思い出すジョークがあります。

男が侯爵夫人をブタ呼ばわりしたことで訴追された。
裁判長は男に言った。
裁判長「お前には罰金を科す。二度と侯爵夫人のことをブタなどと言うのではないぞ。」
男「わかりました裁判長。二度と侯爵夫人のことをブタとは言いません。ですが、ブタのことを侯爵夫人と呼ぶのもいけないのでしょうか。」
裁判長「それはお前の勝手だ。」
男「わかりました。」
そう答えると、男は傍聴席の侯爵夫人に向き直ってこう言った。
「さようなら、侯爵夫人。」

侮辱罪に問うわけにはいかないでしょうね。

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