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犯罪人の移送と当番弁護士

 

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一連の広域強盗事件で国外から指示を出していたとされる容疑者が、今日滞在先のフィリピンから国外退去となり、移送中の航空機が日本領空に入ったところで日本の警察に逮捕されたことは、報道でご存知のことと思います。

フィリピンは日本との間で犯罪人引渡し条約が整っていないため、日本で犯罪を犯した犯罪者がフィリピンに逃亡するという例があるようですが、条約外の外交ルートによる交渉で犯罪人引渡しが行われているようですし、日本で逮捕状が出ることでフィリピンでの在留資格を失い、不法滞在になるため国外退去、という段取りが整っているようなので、フィリピンに逃げれば大丈夫、というわけにはいかないようです。

今回の逮捕劇で思い出したことがあります。
もうずいぶん前のことですが、国内を騒がせたとある事件の容疑者が現在日本に向けて移送されている最中、弁護士会からの電話で、

日本の領空に入った時点で逮捕されて、そのまま警察に留置される見込みなので、到着後、当番弁護士として接見(面会)に行ってもらうかも知れません

と言われたことがあったのです。

当番弁護士というと、身柄拘束された被疑者からの要請で、ひとまず1回無料で弁護士が派遣され、今後の手続や弁護人を選ぶ権利の説明、取調べなどにどのように対応したらよいかなどのアドバイスをするものです。そのまま弁護人として弁護に当たることも少なくありません。

しかし、これは一般的な事件の場合。
これ以外に、弁護士会の刑事弁護委員会の判断で、重大事件などについて、「本人の要請を待たずに」当番弁護士を派遣することがあるのです。

この日たまたま「委員会派遣」の当番弁護士として待機していたところに上の電話が入ったわけです。
マスコミも注目する事件なので、警察にも記者が詰めかけていることでしょう。
新聞やテレビの向こう側で起こっている事件と思っていたのが、急転直下、弁護人として関与することになるかも知れません。
どうなることかとハラハラしていたところ、再び弁護士会から電話が。

あの件は私選弁護人がつくようです

ほっと一安心したのでした。

今回の逮捕劇の裏でも、当番弁護士がドキドキしているのかも知れません。

 

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