弁護士 江森 民夫

 前号での民法改正等の解説に続いて、民法の「相隣関係」の改正についてさらに詳しく解説します。民法第209~238条「相隣関係」では、周辺の土地等の利用関係について詳細な規定を定めています。しかし民法の内容を見ると、現在の土地等の利用の内容にそって円滑化を図る規定として不十分であると言われてきました。そこで次のような規定の改正が行われました。

 第1に、旧民法では隣地の使用請求を認めている使用の目的について、「障壁又は建物」の築造等に限っていましたが、今回の改正でさらに「その他の工作物」の築造等が認められました。また「境界標の調査又は境界に関する測量」のための隣地の使用請求等を新たに認めることになりました。(209条)

 第2に、今回の改正で「電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付」を受けるための、周辺の土地についての導線・導管などの設備設置権・設備使用権を認める条文が新設されました。なおこの「これらに類する」給付には、電話・インターネット等の電気通信も含まれると解されています。(213条の2)

 第3に、旧民法では境界線を越えた隣地の竹木の根は切り取ることを認めていましたが、隣人が任意に枝を切り取らないなどの場合裁判が必要でした。これに対し今回の改正で、隣地所有者に催告した場合、隣地所有者が不明な場合などには、隣地の竹木の枝を切ることができるようになりました。(232条)

 なお今回の民法改正ではそれ以外の改正も行われています。今後とも社会状況の変化に見合った民法の改正の検討が必要であるといえます。