弁護士 岩波 耕平

 日本は2014年に障害者権利条約を批准し、同条約24条に規定されたインクルーシブ教育に取り組んできましたが、2022年9月の国連の障害者権利委員会からの勧告(総括所見)における評価はかなり厳しいものでした。

 インクルーシブ教育とは、単に同じ教室で教育をすることだけではなく、「子ども一人一人に合った環境を提供することを目的とした、障壁を克服するための教育内容や指導内容の変更」を含むものですが、就学相談などにより障がいを持った子を選別し、普通学校(学級)ではなく特別支援学校(学級)に入学させるシステムとなっていることが厳しい評価の大きな要因となりました。

 たしかに、現在の法制度上は、普通学校(学級)に入学するか、特別支援学校(学級)に入学するかは、本人・保護者の意見を最大限尊重することとされています。しかし、普通学校(学級)の受入れ体勢の不備などから、特別支援学校(学級)への入学を強く勧められたり、また保護者も障がいがある子は普通学校(学級)には入学させられないと考えている場合もある(条件の未整備や情報提供が不十分であることが原因)のが実態です。
 国連は、このような実態を問題視しているのです。

 そのため、勧告では、「すべての障害児の普通学校への通学を保障し、普通学校に入りたい子は入れるようにする。(拒絶禁止条項)」などの非常に厳しい要請が出されました。

 「日本のインクルーシブ教育に対する考え方・制度を抜本的に変えていく必要がある。」と指摘されたに等しい今回の勧告を受けて、日本政府がどのように対応をしていくのか、注意深く見ていく必要があります。