弁護士 江森 民夫

 2023年8月31日に、そごう・西武労働組合が、ストライキを実施しましたが、大手百貨店のストライキは実に61年ぶりの事でした。親会社であるセブン&アイ・ホールディングスが西武池袋百貨店等の売却を決めたのに対し、これでは労働者の雇用が守れないことから、労働組合が売却に反対し、ストライキを行ったものです。

 こうした実態を見て、多くの方が労働組合のストライキの意味を考えられたように思われます。

 ストライキ等の争議行為は、交渉力において使用者に劣る労働者が、使用者に圧力をかけるための最後の手段として認められた権利で、憲法28条に明記された権利なのです。団体行動権(争議権)と言われます。争議権は民主国家では当然の権利として認められており、昨年アメリカでも全米脚本家組合、俳優組合、全米自動車労働組合等により大規模なストライキが行われ、賃金の増額等の成果を上げました。

 ところが、我が国の争議件数は諸外国に比べて極端に少なく、2022年の争議による労働損失日数は1789日という状況です。これに対しアメリカでは115.2万日(2021年)、イギリス20.6万日(2019年)、ドイツ19.5万日(2020年)というものでした。

 私は、我が国においても諸外国と同様労働組合がストライキを有力な選択肢として実施できる社会状況を作ることが重要であると考えますが、いかがですか。