弁護士 斉藤 豊

 両国の関係は帝政期前に遡るがやはりソ連邦の存在は大きい。

 1930年代にウクライナを襲ったホロモドールは飢餓テロともいわれる人災だが、700万人以上の餓死者を出したこの悲劇に関する資料は同時期のユダヤ人虐殺(ホロコースト)と比べると少ない。数年前に封切られた「赤い闇」というポーランド映画がこのテーマを扱っていた。地味なテーマにもかかわらず結構(若い)観客が入っているので驚いた。

 『チャイルド44』(新潮文庫)はイギリス人作家によるミステリー仕立ての娯楽小説。舞台設定としてホロモドール期のウクライナを扱っている異色作だ。

 『悲しみの収穫―ウクライナの大飢饉』(恵雅堂)は現在日本語で読める数少ない文献で、絶版になっていた2007年邦訳が今回の侵攻を機に再出版された。

 『オリガ・モリソヴナの反語法』(米原万里・集英社文庫)は、日本人女性の主人公が冷戦下のプラハでの経験をもとにスターリン体制下の大粛清を扱った興味深い小説。プーチンに対してものが言えないロシア社会の体質は今に始まったものではないことがよくわかる。