弁護士 髙見 智恵子

 2023年4月、同性愛者であることを理由に迫害を受けたウガンダ国籍の女性について、大阪地方裁判所は国に難民と認めるよう命じました。また、5月には、本国における労働組合活動を理由に迫害を受けるおそれがあるカメルーン人男性が、難民不認定処分の取り消しを求めた訴訟で、東京地方裁判所は不認定処分を取り消す判決を言い渡しました。入管が適切な審査をしていたならば、訴訟ではなく、一次審査や不服申し立ての段階で難民と認定されていたはずの人たちです。

 とりわけ難民審査参与員制度の形骸化が問題となっています。難民審査参与員は、一次審査で不認定となった難民申請者の二次審査を行い、意見を述べます。現在111名の難民審査参与員がいますが、「入管として見落としている難民を探して認定したいと思っているのに、ほとんど見つけることができません」と2021年4月21日の国会(衆議院法務委員会)で参考人として発言した、1人の難民審査参与員の年間審査件数が2021年は全体の20%(1378件・勤務日数34日)、2022年は全体の25%(1231件・勤務日数32日)だったことが明らかになりました。1年間にこれほどの件数を丁寧に審査することは到底無理です。難民審査参与員の中には、2年間で担当ケースがゼロだった人もいます。入管庁による恣意的な事件配点、不適正で不公正な不服申立制度の運用が行われていると言わざるを得えません。

 多くの反対の声を押し切って成立した改正入管法は、難民申請3回目以降の申請者を送還できるとするものです。必要なのは強制送還を可能とすることではなく、難民認定制度の適正化、公正化、そして難民保護を中心にした入管法の改正です。