1 男性の育児休業の制度は、法改正前においても存在しました。原則子どもが1歳になる前日までの間、育児のために休暇を取得できる制度です。
さらに、両親がともに育休を取得した場合に、子が1歳2カ月に達するまで延長される「パパ・ママ育休プラス」のほか、出産後8週間以内に育休を取得し8週間以内に終了している父親は、再度育休を取得することができる「パパ休暇」という制度も存在していました。しかし、改正前の制度下における男性の育休取得率は、2020年度で12.65%と、国際的にはいまだ低い水準になっています。
これらの原因は、そもそも育児休業制度自体の認知度が低いことや、前例がないため会社に育休取得できる雰囲気がないことが考えられます。
このような問題を踏まえ、2021年6月、改正育児・介護休業法が国会において成立しました。
2 本改正には、3つの大きな改正点があります。なお、これらの改正点は、それぞれ段階的に施行されることとなっているため、その点は注意が必要です。
(1) まず2022年4月に施行されるのが、育休の周知・意向確認義務です。
本改正点の目的は育休を取得しやすい「社内の雰囲気づくり」です。
すなわち、育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者への個別の周知・意向確認が事業者に義務づけられました。努力義務ではありませんので、必ず周知と意向確認をしなければなりません。
(2) 2022年10月に施行されるのが、出生時育休制度の創設です。本改正点の目的は子どもの出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設です。
現行制度では「パパ休暇」を取得した場合を除き、一度育休を取得した労働者は、原則として再度の育児休業をとることはできません。
しかし、本改正により、子どもの出産直後8週間以内に父親が最大4週間を2回に分けて休暇を取得することができるようになりました。さらに、現行の育休制度は維持されたうえ(なお、「パパ休暇」は廃止されます。)、これについても2回に分割することができるよう改正されましたので、最大で合計4回取得することができます。
(3) 最後のポイントは、2023年4月に施行される大企業の取得率公表義務化です。本改正点の目的は周知・意向確認義務と同じく男性が育休を取得しやすい社内の雰囲気づくりになります。
3 男性が育児に参加することが当然と考えられるようになり、「イクメン」という言葉が風化しつつある現代において、本改正はこのような世間の風潮を(一部)反映させるものとなっております。いまだに育児は女性がするものだと考えている方は、これを機に考え方をアップデートする必要があるでしょう。