弁護士 斉藤 豊

 この4月1日から民法の成年年齢が満20歳から満18歳へと引き下げられます。日々の生活に直結する基本法の民法は、ここ数年にわたり債権法、物権法、相続法などの分野で大きく内容を変えました。明治以来満20歳とされた成年年齢が平成30年の改正法により引き下げられたのもその一環です。既に、公職選挙法と国民投票法の選挙年齢は18歳になっており、国政上の重要決定について18歳、19歳の決定権を尊重することから、市民生活の基本ルール適用を制限なく受ける年齢もこれに合わせることにしたのです。世界的に見ても、OECD加盟国35か国(改正時)のうち大半の国が満18歳を成年年齢とし、日本以外には韓国(19歳)、ニュージーランド(20歳)だけが例外となっていました。

 民法上未成年者が契約をするには父母の同意が必要であり、同意なくして締結した契約は取り消すことができます。今回の改正により1人で契約をすることができる年齢が引き下げられたため、たとえば携帯電話の申し込みとか、アパートの賃貸借契約の契約、クレジットカードの作成などが、満18歳から親の承諾なくできるようになります。また、親権に服する年齢も引き下げられたことから、自分の住む場所を決めたり、進学や就職などの進路について、自分の意思で決定できる年齢が早くなることになります。

 我々がよく相談をされる問題に離婚の際の養育費があります。既に取り決めた養育費の負担義務は今回の改正で変わるのでしょうか。養育費は成人に達するまで、すなわち20歳まで支払うと決めるのが一般的だからです。しかし、養育費は経済的に未成熟な子に対する親の義務なので、これまでも大学卒業年齢の22歳まで支払いを取り決めるという例もありました。このため、子が成年になるまでに支払うと約束した養育費の期限は改正によっても当然には引き下げられない、とするのが法務省の見解です。しかし、これからは養育費の支払いの終期を年齢で決めておかないと、トラブルのもとになるかもしれないので注意が必要です。

 成年年齢が引き下げられる一方で、男性の婚姻年齢が18歳とされているのに合わせて、女性の婚姻年齢も16歳から18歳に引き上げられました。これまでは成年擬制といって、未成年で結婚した男女は婚姻により成年と同等の扱いになるとされていたのですが、今回の改正により契約上の成年年齢も婚姻年齢も男女の区別なく18歳に統一されました。

 変わらないのは飲酒や喫煙が許される年齢です。これらについては健康上の問題もあり、従来通り20歳からという規制が維持されています。競輪・競馬等のギャンブルについても同様に20歳にならないとできません。18歳になったからといって、全てが大人扱いとなるわけではないので、気を付けましょう。
 さて、成人式はどうなるのでしょうか?