「ロコ・ロンドン金取引」という言葉を聞いたことがありますか。ロンドン市場での金の売買と考えた方、残念ながら不正解です。ロコ・ロンドン金取引とは、金地金の現物取引でもなければ、金の先物取引でもありません。

 「ロコ」というのは「~において」という意味ですから、「ロコ・ロンドン金取引」は「ロンドン渡しの金の取引」ということになりますが、実際には「ロンドンを受け渡し場所とすることを条件としたときの価格による金の取引」と言った方が正確です。つまり、現物の取引をしているのではなく、変動する金価格に対して資金を投じ、利ざやの獲得を目指す取引なのです。しかもこの取引は、証拠金取引であるため、実際の投資額の数十倍の取引が行われることになっているので、文字どおりハイリスク・ハイリターンの投機的取引です。

 ここまで聞くと、リスクを承知の上で余裕資金を投資するなら、案外魅力的な投資ではないかと思う方もあるかも知れません。しかし、この取引には大きな落とし穴があります。ロコ・ロンドン取引では、業者は顧客の注文を市場に取り次いでいるわけではなく、業者と顧客が直接売主・買主の関係に立つ「相対取引」が行われているのです。つまり、顧客の損失が業者の利益になるという利害対立があり、価格も業者が決めた額で決済されることになっています。業者も慈善事業ではありませんから、顧客はリターンよりも遥かに大きいリスクを負っていることは明らかでしょう。

 今年6月、あさひアセットマネジメントというロコ・ロンドン貴金属取引を行っていた業者が、特定商取引法違反の疑いで家宅捜索を受け、経済産業省から6か月間の業務停止命令を受けました。報道によれば、「金の価格が高騰するので、確実に利益を得られる」などと説明して顧客を勧誘していたそうです。私も、実際にこの会社から勧誘されたという方のご相談をうかがったことがありますが、おそらく判明している被害は氷山の一角であろうと思われます。

 プラチナ、銀などの貴金属取引であったり、「金スポット取引」という名称を使っている例もあります。「確実に儲かる話」など存在しないことを肝に銘じ、理解できない取引は決してしないようお気を付け下さい。