厚生労働省は長い間、高齢者の生活保護世帯に支給してきた月額1万8千円程の老齢加算手当を突然廃止する方針をかため、2004年(平成16年)から今年まで2年をかけて段階的に全廃することとしました。

 月額10万円弱の生活保護費で暮らしてきた単身の高齢者世帯にとっては、そこから2万円程の老齢加算分を廃止されることは大変な生活上の打撃です。そこで、これでは憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」は営めなくなるとして、京都や広島・秋田等の70歳以上の被保護者達が、1昨年から昨年にかけて相次いで廃止処分の取消しを求める訴訟を起こしました。この動きに呼応して、こんどは東京在住の高齢者達10世帯程が老齢加算廃止処分取消しの違憲訴訟を起こそうというわけです(提訴は2月予定)。

 ところで、厚労省が老齢加算の支給を始めたのは今から50年近くも前のことであり、支給の理由は、「高齢者世帯に特有の支出を補うため。例えば高齢者は歯が悪くて、軟らかいものしか食べられないから」などということでした。が、実際上の理由は、1959年(昭和34年)の国民年金制度の発足に当たって、「老齢福祉年金」が創設された際に、生活保護を受けている高齢者にも老齢福祉年金の受給に等しい利益が与えられるようにという政策的な配慮にあったようでして、それはそれで、もっともな措置だったと思います。

 ところが、小泉内閣は、もっぱら予算・財政規模の縮減という経済的な理由に基づいて、上記のような立法理由が消滅したわけでもないのに、対象者である高齢者世帯の意見も聴かずに、いきなりこの老齢加算の制度を廃止するという乱暴な措置に出たのです。このやり方に怒った高齢者の人達は、この度の廃止処分取消請求の裁判で、かつての朝日訴訟と同じく、「健康で文化的な最低限度の生活」とは何か、「人間らしい生活」はいかにして保持されるかを問うていく決意を固めております。