今年1月18日、18歳選挙権を機に18歳・19歳を「特定少年」とした「改正」少年法下で初めての「特定少年」への死刑判決がありました。一方的に好意を寄せていた女性から交際を拒絶され、絶望感や怒りを覚え自暴自棄になり、女性の自宅でその両親を殺害し放火するなどした「甲府殺人放火事件」と報じられ、「特定少年」として初めて起訴時の実名公表・実名報道があった事件でした。当時19歳の少年は、精神鑑定などによれば、実父が窃盗で逮捕、養父からの暴力、母親による就職の強要・過干渉など、厳しい家庭環境での成育歴を背景とした行為障害・愛着障害・複雑性PTSDといった精神「障害」下で現実逃避から起こしたもので、公判では、心証を悪くすべく謝罪はしない、社会に戻るつもりはなく控訴もしない旨を述べ、弁護人による控訴も自ら取り下げ、判決は確定してしまいました。
この判決には、この間の少年法厳罰化の流れの下での「判例に則した標準的な判断だ」とする見方も有るようですが、逆境体験の蓄積から起こしてしまった事件に向き合えないままの少年を「反省がなく、更生可能性が認められない」と安易に死刑にする対応は、少年法の理念を忘れたものといわざるを得ないでしょう。
昨年末公表の「こども大綱」は、「心身の発達の過程にある者」を「こども」とし、「18歳や20歳といった年齢で必要なサポートが途切れないよう」にするとして、「非行防止と自立支援」も「こども施策に関する重要事項」に挙げました。上記のような「特定少年」に向けた配慮をここに読み込んでいくことが求められるのではないでしょうか。