2013年からなされた公的年金の支給額引下げが生存権を保障する憲法25条等に違反するとして、44都道府県で、5千人を超える年金受給者が提訴していましたが、最高裁は、本年5月末から6月初めにかけて、私が関与する東京の事案を含む21事案について一斉に上告棄却判決を言い渡し、原告敗訴が確定しました。その根底には、生活保護制度があれば、年金が低額であっても生存権は保障されているとの考えがあります。実際、生活保護利用者の過半数は高齢世帯です。しかし、様々な事情から、利用資格がある人のうち2割程度の人しか生活保護を利用できておらず、多くの人が生活保護基準以下での生活を余儀なくされているのが現実です。
他方、民主党政権下で野党であった自民党は生活保護PTを立ち上げ、座長の世耕弘成参議院議員は「生活保護費が年金額より高いのはおかしい」と述べ、生活保護費10%カットを政権公約としました。そして、政権復帰を果たすと、同じく2013年から生活保護基準引下げを強行しました。その違憲性、違法性を問い、29都道府県で、千人を超える生活保護利用者が提訴していますが、本年5月末現在で、敗訴判決数を上回る17件もの原告勝訴判決が言い渡されていました。特に、昨年11月の名古屋高裁判決が、国の国家賠償責任まで認めたことは画期的です。
そして、本年6月13日、私と長谷川弁護士が関与する裁判でも東京地裁は原告勝訴の判決を言い渡しました。東京では3つの原告グループがありますが、全件で勝訴しています。もはやその違憲性、違法性は明らかです。政府は、最高裁判決を待つことなく、生活保護基準の見直しと被害回復を図るべきです。