弁護士 仲村渠 桃

 昨今報道などで、政府が示した骨太方針2022において、現行の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードに健康保険証機能を付加したいわゆる「マイナ保険証」に置き換えるという方針を政府が立てたことが話題になっています。更にこれと並行して、医療機関に対しては、マイナンバーカードによるオンライン資格確認システムの導入を2023年4月以降原則義務化することも決定されています。
 マイナンバーカード裏面に記載されている個人番号は個々に与えられれば生涯不変の究極の個人情報です。健康保険証を原則廃止してマイナ保険証に健康保険証上の情報を紐付けることは個人情報を政府が一元管理する監視社会の推進にも繋がりますし、情報漏洩の危険という問題も残されています。現行なんら問題ない健康保険証を廃止し、「マイナ保険証」に移行させることでなりふり構わずマイナンバーカードの普及を推進する政府の施策は、マイナンバーカードの取得の強制となり、任意取得の原則に反するものです。
 また、医療機関に対してオンライン資格確認システム導入を義務づける施策についても、システム導入費用には一定の補助金は出されるものの導入費用を全て賄えるものではなく、医療機関に過大な負担を強いるものです。実際、システムを導入することができた医療機関は、原則義務化まで約半年に迫った昨年9月25日時点においても全体の19.9%に留まり、対応できる医療機関は少数に留まっています。
 政府の指針は、マイナンバーカードの普及という目的を達成するために、現状全く支障のない健康保険証制度を廃止し、患者にも医療機関にも過大な負担を強いるものです。今声をあげることが重要です。