弁護士 斉藤 豊

 この5月に民事裁判のIT化を可能とする民事訴訟法の改正が国会で成立しました。
 訴状などの書類の提出や閲覧をオンライン化し、弁論などこれまで法廷で行っていた手続もウェブ会議等で代用できるようにするというものです。ネットで証人を尋問し、判決の送達もオンラインとなると、今まで我々が慣れ親しんでいた裁判は大きく様相を変えるでしょう。
 もっとも、法改正に先行して現場ではオンラインでの裁判は既に一部で行われています。
 職場や学校でのオンライン会議や集会がコロナの影響により一気に普及したのと同様、技術革新ではもっとも保守的といわれる裁判所でも感染防止がIT化の流れを加速したのです。

 しかし、対面での営みをオンラインで完全に代替できないことも皆さん経験済みと思われます。裁判は、所詮人間が行う人間臭い作業です。ディスプレイの向こう側の裁判官に熱弁を奮って果たしてどこまで当事者の思いが通ずるものなのか、慎重な見極めが必要でしょう。