弁護士 長谷川 弥生

 本稿執筆時点においてもロシアによるウクライナ侵攻は止まることなく日々新たな戦争被害が生まれている。露国大統領の問題だけでなく、日本を含む国際社会が、ユーラシア地域の人々の安全保障を軽視し、パワーゲームに明け暮れてきた結果でもあり、その責任は重い。

 既に千名を超えるウクライナ人が日本に避難している。日本は、ウクライナ避難民の受入れ、支援を表明し、国内で1年間働ける「特定活動」の在留資格に変更できるとした。
 同じように母国での危険から逃れてくる人に「難民」がある。日本の難民の受け入れには三種類あり、主たるものは難民条約上の難民(条約難民)である。条約難民の審査は非常に厳しく、難民と認められることは滅多にない。難民申請中は数か月の在留資格を更新する場合が多く、就労が許可されないこともある。そもそも在留資格さえ出ないこともあり、そうなると健康保険加入もできない。

 今回日本政府は「避難民」として明示的に難民と扱いを違え、1年間の就労が可能な資格に切替できるとした。人道的配慮で柔軟に対応することはよい。しかし、アフリカ大陸から来た難民申請している人の目を思い浮かべると、本国にいては危険ということでは同じなのにこの違いは何なのだろうとやるせない気持ちになる。