弁護士 加藤文也

今年は、東西冷戦の象徴と言われたベルリンの壁が崩壊してから31年目に当たります。壁の崩壊からの30年は、世界に本格的な経済のグローバル化をもたらし、経済の状況を一変させるとともに、それ以前の30年と比較すると、民族紛争などにより、大量の難民・避難民を発生させるなど多難な時代であったと思われます。

壁崩壊後の30年は、わが国では平成という時代の30年と重なりますが、グローバル化の波のなかで、所得格差が拡大する事態を止めることができず、中国の急速な経済発展と世界的IT(情報技術)企業の急成長に伴い、わが国の代表的企業の国際的位置づけ(株式時価総額)を大きく下げた時代でもありました。

31年前の1989年は、フランス人権宣言から200周年ということもあり、歴史を突き動かした自由、民主主義の希求が輝きを放っておりました。が、この30年を経過する中で、保護主義が台頭し、自国第一主義を掲げ、多国間協調の枠組みに背を向けるトランプ大統領が登場するなど、その輝きを失ったかに見える事態が生じています。

しかしながら、長い歴史的観点からみるならば、現在の事態を悲観的に捉えるのでなく、フランス革命を経て人権宣言の中に規定された自由、民主主義は、その本質を常に希求し、深化、発展させるべきものと捉えなおし、そのための「不断の努力」(日本国憲法12条)を続けるべきではないでしょうか。

令和元年に開かれたラグビーワールドカップでの7か国の出身者で構成された日本チームの大活躍は、今後、真の意味での国際化とわが国経済再生のヒントを与えていると思われます。