弁護士 斉藤 豊

 安倍政権の最重要法案の一つであった「働き方改革関連法案」が可決成立しました。この法案は複数の労働関連法の改正を一括して行うもので、「労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する」法律だと宣伝されました。

 法案の中で特に問題になったのが、裁量労働制の対象の拡大と高度プロフェッショナル制度(「高プロ」)の創設でした。いずれも時間規制の原則を緩めたり、撤廃したりするものです。このうち裁量労働制に関する法案は、依拠したデータに多くのミスがあることが判明し、安倍首相自らが国会で謝罪して法案を撤回しました。ところが裁量労働制をよりドラスティックにした高プロ制度は、労働組合や過労死被害家族など多くの批判の声を無視してついに導入がされてしまいました。

 高プロは、①職務の範囲が明確で、②一定の年収を有する労働者が(1075万円以上)、③高度の専門知識を必要とする等の業務に従事する場合に、④一定の要件のもとに、労働基準法の労働時間規制の適用をなくすというものです。④の要件の中には、年間104日の休日を確実に取得させること等の健康確保措置を講ずることや、本人等の同意が要件とはなっていますが、この制度の対象となると本人の裁量で労働時間が決められるわけではなく、使用者の指示があればほぼ際限なく労働することを余儀なくされる仕組となっています。高プロの賛成論者は、多様な働き方を導入することが経済の活性化につながると言って法案を擁護しますが、私には、「働き方改革」ではなく、経営者の「使い方改悪」の悪法としか思えません。