刑事裁判の大改革である裁判員制度がいよいよ今年の5月から始まりますが、今年は同じく刑事裁判の領域での大きな変化として、被疑者段階での国選弁護人制度が本格的にスタートする年となります。

 これまで国選弁護人制度は、起訴された後の段階(刑事被告人)にしか認められませんでした。過去の多くの冤罪事件が被疑者(起訴される前)段階での無理な取調べが原因であったことから、弁護士会では従来から、被疑者となった時点から国選で弁護人をつけるよう国に要求し続けてきました。

 ところが、この弁護士会の要求に国がこたえなかったため、各地の弁護士会が15年ほど前から当番弁護士制度を発足させ、これと法律扶助協会(現在は、弁護士会が資金を出して法テラスへの委託事業として)の刑事事件援助制度をあわせ活用することにより、被疑者段階で身柄拘束をされた人々に対する弁護権の補充を行なっていたのです。しかし、弁護士や弁護士会の自主的な努力には限界もあり、また本来刑罰権発動の対象となる被疑者・被告人に刑事弁護の保障をするのは、国の義務でもあることから、2006年からようやく段階的に被疑者段階でも国選弁護人をつける制度が発足しました。

 しかし、現行の被疑者国選弁護は、法定合議事件(殺人、傷害致死、強姦のような重大事件)に限られており、窃盗、傷害、業務上過失致死傷事件など一般的に多くみられる事件にはその適用がありませんでした。今回の拡充は、この重大事件以外にも被疑者弁護の制度を拡充し、必要的弁護事件といわれる弁護人をつけなければならない全ての事件に、被疑者段階から国選弁護人の制度を保障しました。

 犯罪の嫌疑を問われた人だけでなく、昨年末からは犯罪被害者が「被害者参加人」という形で刑事手続に関与することが認められ、資力のない被害者に対して国選で弁護士をつける被害者参加国選弁護人の制度も始まりました。裁判員制度での刑事弁護人の役割はどうなるのか、拘禁された被疑者のほぼ全てが刑事弁護の対象となる事態にどう対応すればよいのか、刑事事件に被害者側の代理人として登場する弁護士は被告人とどう対峙したらよいのか、いずれもわれわれにとって未経験の領域です。犯罪者とされた者、被害者、そしてわれわれの安全な社会にとって、どのような刑事システムが最善なものとなるのか、実務のあり方についてしばらくは暗中模索の時期が続くかもしれません。