10年ひと昔と言います。英語には【decade】という単位があって、10年間を意味します。時のとらえ方は、洋の東西を問わず、案外同じようなものなのかも知れません。
 中学1年生も、10年後には大学を卒業して社会人になります。子供から大人への10年間です。
 「もはや戦後ではない」という言葉で有名な経済白書は、昭和30年版、敗戦から10年後のことでした。焼け跡から10年で復興を遂げたのです。
 フランスの経済学者ジュグラーは、企業の設備投資の影響で、約10年周期で景気が循環すると唱えました(ジュグラーの波)。10年たてば世の中も変わるということです。
 他人の物を自分の物と勘違いして10年間使い続けると、自分の物になってしまいます。取得時効(民法162条2項)といって、10年間にわたる事実の積み重ねの重みを法律が認めたものです。
 死刑や無期懲役、無期禁錮に当たるような重大事犯以外は、最長10年で公訴時効が成立します(刑事訴訟法250条)。10年もたつと、証拠も見つかりにくくなるばかりか、関係者の記憶もおぼろげになるので、公正な裁判を維持しにくくなるというのも一つの理由です。
 プロ野球で累計10年間一軍登録されると、FA宣言ができます(逆指名選手以外は9年間)。10年間一軍に在籍したということは、一流選手の証しなんですね。
 裁判官は憲法で任期が10年と定められていて、10年ごとに再任手続があります。特に最初の10年間は判事補といって、判事とは資格も肩書きも異なっています。10年たって初めて一人前ということでしょう。
 私も弁護士になって丸10年になります。この10年間、世の中も身の回りもいろいろ変わりましたが、当の本人、私自身はどれほど成長したのかと自問自答しています。
 来るべき司法改革のうねりを乗り越えるだけの力がついたかどうか、その答えが出るのには、もう10年くらいかかりそうです。