最近溝口雄三早大教授(中国史専攻)の書かれた「中国の衝撃」という本を題名にひかれて読む機会があった。大変示唆にとむ多くの問題提起(あとがきでどのような読者層を想定して書いたか、(一)から(六)までの條件が参考になる)がなされており、到底これを要約することは至難であるが私なりにまとめると、「中国の衝撃」とは次のようになる。①中国は数千年来の歴史と固有の文化を持っていること、②福沢諭吉の脱亜(入欧)に見られる西欧文明圏への突入(資本主義化)が中国より一歩リードしたという優越的意識が日本(人)に潜在していること、③しかし中国も中国のタイプ(型)と方法で一貫して西欧(近代)化を推進してきており、現在ある部分では日本を逆転しかねない状況にきていること、④日中の特に経済関係は一層深まり最近の日本経済の一定の回復は日中貿易(輸出入相手国一位国が米から中国へと変換し始める等)の急速な増大により支えられていること、⑤最後に結論として同教授の言葉を借りれば、『「脱亜」によってリードしてきたはずの「アジア」後方から追随してくると見なしていた「アジア」によって、今いつのまにかこちらリードされはじめているという状況、日本人の「脱亜」という認識と現実の「アジア」という事実の間の微妙なギャップ、しかもその現実のギャップにほとんどの日本人が気がついていないという認識上の二重のギャップ。このギャップを“中国の衝撃”という呼称で問題にしたいと思う。』となるのである。この同教授の指摘は、私に言わせれば、最近の日中韓等のギクシャクした関係を解決する上で日本(人)に対する極めて重要な問題提起であるように思われる。(なお陳舜臣・日本人と中国人・集英社文庫の一読を)最近頓に盛んになっている中国脅威論やナショナリズム論の台頭等々は、この問題と全て裏腹であるというべきである。日本は国連の常任理事国をめざしてかえって中・韓と摩擦を強めているが、日本は真にアジアの一員として共生していく途を、この際徹底して模索することこそ事態解決の鍵であることを自覚すべきである。