私は、今住んでいる土地と建物を売却しようと思っています。そこで、不動産屋に相談したところ、隣地との境界には問題がありませんかと聞かれましたが、実は東側の隣地の人との間には境界について従前から争いがありますがどうしたら良いでいしょうか。

 

回答者:弁護士 井澤光朗

 

 隣地との境界の紛争はまずは当事者同士における話し合いになります。話し合いによって解決できることが最も良く、特に土地の売却を考えているのであれば、早期解決が求められます。どうしても、話し合いによる解決ができない場合には、隣地との境界に紛争のあるまま売却しなければなりませんが、当然売却価格を減額される可能性が大きくなります。これまでは、当事者の話し合いで境界が定まらない場合には境界確定訴訟の裁判を起こし、裁判所に決めてもらうことになります。そこでは、それぞれが境界だと主張する事実関係の根拠、当該土地における境界を表す徴表、土地の測量などが調べられ、裁判所の判断ということになりますが、境界確定訴訟は時間がかかり問題がありました。

 そこで、不動産登記法が改正され、境界に争いがある場合には、当該土地を管轄する法務局に筆界特定の申請をすることができるようになりました。法務局の登記官の中から筆界特定登記官が筆界特定を行うことになります。筆界登記官は筆界調査委員に事実関係の調査、当該土地の測量、実地調査を実施させ、筆界調査委員の意見を提出させ、筆界登記官が筆界特定を行うことになります。筆界特定は通常要すべき標準的な期間に行うことになっていますので、これまでの境界確定訴訟よりも短時間で筆界特定ができるようになりました。筆界調査委員には弁護士、土地家屋調査士などが考えられています。なお、境界確定訴訟そのものがなくなるわけではありませんので、筆界登記官の筆界の特定の後にも、境界確定訴訟によって、その特定が覆される可能性はありますが、境界確定訴訟において、筆界登記官が筆界を特定した筆界特定手続記録を裁判所の手続きで利用することになっていますので、訴訟においても筆界登記官の筆界特定は尊重されていくものと思われます。
(この法律は本年4月13日公布され、来年3月までに施行が予定されています。)