1.現在商法を大改正して、新しい「会社法」という名前の法律が去る6月29日可決成立しました。従前、合名・合資・株式会社に関しては、「商法」に、そして有限会社法、株式会社の監査等に関して商法特例法などがあり、これらを総称して会社法と言ってきました。今回これらの法律を統合して「会社法」として一本化しております。商法は最近、頻繁に改正され、ストックオプション制度、株式交換制度、会社分割制度、委員会等設置会社の導入等、産業界やアメリカの要望に応えると同時に、経営の規律強化を図ってきました。

2.今回の制度改正は、大げさに言えば戦後日本の「会社」や「会社法」に対する理念や哲学まで変更する、大改革です。膨大ですので概要のみ以下お知らせいたします。

(1) これまでの商法との違いは、「規制緩和」であり、会社法は最低限守らなければならないルールを示し経営の自由度を高めました。株主と経営者は戦略や環境に応じて自社に合ったルールを別途定められ、この意味で会社運営の基本を定めた定款が重要(「定款自治」の認容)となり、株主と経営陣が自己責任で定款に定め、会社を運営することになります。商法が永年基本理念としてきた「株主平等」の原則も、見直され「株主の地位」を下りる制度も出来ました。株券についても、発行しないことが原則化されます。

(2) 会社の形も、基本は「株式会社」になり、有限会社は新に作れなくなり、資本金の規制もなく「1円」でもよく、株式を公開しているか否か、同族会社か否か等に応じて会社の組織を柔軟に設計できます。そして株式会社は株主総会の決議で何時でも剰余金を配当でき、四半期毎に配当する会社が現れるかも知れません。他方資本金の額にかかわらず、純資産額が300万円未満の場合には剰余金があっても株主に分配することは出来ないことになっています。更に責任を限定し、運営を柔軟に出来る組合方式の「合同会社」を新設しました。また、「会計参与」という新ポストも規定され、経理書類の作成・保存に関与することになります。

(3) 取締役会の権限も強化され、決議できる範囲も拡げられ、取締役会の決議で合併も出来る範囲も拡げられました。そして株主総会は取締役や監査役に信任投票する場とし、また企業買収などに対する「毒薬条項」の多様化も可能になります。

(4) 施行は来年を予定しており、戦後の商法・会社法の大改革ですから、今から十分な準備が必要です。