昨年5月に労働審判法が公布され、2006年4月から労働審判制度の運用が開始されます。

 労働審判法は個別労働関係民事紛争について、紛争の実状に即した迅速、適正かつ実効的な解決を図ることを目的に制定された法律で、労働審判制度は労働審判法に基づいて設けられた新しい労働紛争処理制度です。

 この制度の対象となるのは「個別労働関係民事紛争」です。例えば、解雇の効力を争う紛争、賃金の支払いを求める紛争等がこれに当たります。他方、労働組合等の団体が当事者となる紛争、個人的な金銭の貸借をめぐる紛争、刑事事件や行政事件は対象となりません。

 労働審判手続は、労働審判官(裁判官)1人と労働関係に専門的知識を有する労働審判員2人で組織する労働審判委員会によって運営されます。

 労働審判手続は、当事者の裁判所に対する申立てにより開始されます。労働審判委員会は調停成立による解決の見込みがあるときはこれを試み、調停成立による解決に至らないときは事案の実状に即した解決をするために必要な審判(労働審判)を行います。調停や労働審判により事案が解決した場合それらは裁判上の和解と同じ効力を持ちます。

 他方、調停が成立せず労働審判も行われずに手続が終了した場合や労働審判が行われても当事者から異議の申立てがなされた場合などは手続は通常の訴訟手続に移行します。

 労働審判手続の大きな特徴の一つは、原則として3回以内の期日で審理を終結することとされていることで、迅速な紛争解決を図ることができます。

 まだ、実際の運営は行われていないので、不透明な部分もありますが、運用次第では当事者にとって非常に便利な制度となりますので、大いに活用することが期待されます。