1月1日から新破産法が施行されています。旧法は事業者破産を想定して1922年に制定され、80余年を経て、昨今の経済情勢の中で実情に会わなくなってきていたためです。今は消費者破産などの個人破産が圧倒的で件数も増え、大型の事件もあり、民事再生法や会社更生法などの倒産処理手続き間の整合性を確保する必要も出ていました。厳格で硬直的な旧法では、これらの問題に、迅速かつ効果的で柔軟な対応が困難で、費用や時間もかかりがちだったことから行われた大改正で、多岐にわたりますが、紙幅の関係で一部だけ紹介します。

 まず、従来はカタカナ表記で条文の配列も概念的でわかりにくかったのが、平仮名表記で基本的に手続きの流れに沿った配列になり、「破産宣告」という用語は無くなり、「破産手続き開始の決定」という呼び方になりました。

 手続きの迅速化合理化と公正さの確保の観点からの、破産手続き全体の見直しがあります。破産手続き開始の申立裁判所の管轄拡大がはかられ、経済的に密接な関係にあり債権者共通の複数債務者の破産事件を一体的に処理できるようにしたり、債権者多数の場合に専門的集中的処理体制のある高裁所在地の地裁への申立を認めました。

 債務者の財産の逸失を防ぎ債権者間の公平のため、強制執行等を一律に禁止する包括的禁止命令、保全管理命令制度により財産保全処分の充実が図られ、否認権のための保全処分制度が新設されました。債権届出に時期的制限を設けたり、破産債権の確定手続きに簡易・迅速な決定手続きを設けたり、債権者集会の簡素化や簡易配当手続き制度が設けられました。

 個人破産の場合には、自由財産の金銭の範囲が、以前は21万円とされていたのが、標準的世帯の必要生計費の3か月分(99万円)として破産者の生活保障と経済生活の再生を期しました。破産手続きと免責手続きを一体化し、免責手続中の強制執行等を禁止する一方、故意・重過失に基づく生命侵害等の不法行為債権や養育費債権が非免責債権に加えられました。

 さらに、債権の優先順位として、破産手続開始前3か月間に生じた給料などの労働債権の順位が引き上げられました。賃貸人破産の場合に第三者に対抗できる賃借人に対して破産管財人は賃貸借契約を解除できないこととされました。