弁護士 仲村渠 桃

 夫婦別姓訴訟とは、婚姻の際に夫又は妻のいずれかの姓を名乗ることを強制する現行法の規定が、婚姻を「両性の合意のみに基づいて成立」すると定める憲法24条1項や「信条」による差別を禁止する憲法14条1項などに反して違憲であるとして、夫婦がそれぞれの姓を記載した婚姻届を受理するよう求めた裁判です。
 2015年12月に初めての最高裁大法廷判決において合憲判断とされましたが、15人中5人が「違憲」であると判断しました。今回の裁判でも再び大法廷での判断がされると発表されたときには、ついに違憲判断が出るかと期待しましたが(大法廷が開かれる場合、判例変更がされることが多いのです)、蓋を開けてみれば反対意見は15名中4名に留まり、再度合憲判断が下されることとなりました。
 しかし、先の衆院選では、党首討論会において外交・安全保障、経済対策等に並んで選択的夫婦別姓への賛否が問われました。登壇した8党の党首の内、与党自民党を除き全員が賛成の手を挙げた光景は記憶に新しく、選択的夫婦別姓が主要政策の一つとして取り上げられるまでになったことは、大きな前進だと感じました。また、同時期に行われた国民審査では、夫婦別姓訴訟につき合憲と判断した裁判官4人は他の裁判官よりも高い不信任率となりました。ここからも、選択的夫婦別姓を求める社会の声が見て取れます。
 私が弁護団の一人として活動している同性婚訴訟も同様ですが、多様な生き方を肯定できる社会は全ての人に生きやすい社会だと信じています。今後も本訴訟には注目していきます。