
昨今の物価高騰を受け、報道で「〇〇が値上がっています」という言葉を聞く機会が増えた。だが私には違和感が強く、どうにも受け入れがたい。
「値上がり」は、主語「値」に自動詞「上がる」が作用した名詞化であり、動詞にするなら「〇〇の値が上がっている」、または「値上がりする」(複合サ変動詞)が正しい。雪解けが進行中でも「雪解けている」にはならないし、こむら返りも「こむら返る」とは言わない。文法がこむら返っている。
もっとも、言葉も生き物だ。「値が上がる」の「が」すら略したいほど、物価上昇が日常的な話題ということだろう。
さて、「値上がり」は自動詞由来だが、能動的に上げる場合は、他動詞+目的語=「値上げ」という表現になる。ここで、賃金については「賃上げ」はあっても「賃上がり」はない。価格は自然に(否応なく?)上がるが、賃金は自動的には上がらない。鼠返しはあっても「こむら返し」がないのと同じだ。
そういえば、「値下がっている」の方は、とんと聞かない。文法だけでなく生活もこむら返っている。


