
私が弁護士になりたての頃、自由法曹団の集会に行くと、そこには国民救援会(冤罪事件や人権侵害事件等を救援する団体)が「絵画」の展示販売をしていた。多分画家に絵を寄付してもらい、それを救援会の活動資金としていたのだと思う。絵が好きな私は、見事な風景画があり、しかし高額で一晩考えて翌日買うことにして見に行ったらもう売却済みであった。残っていたのは、噴煙を上げる荒々しい山岳絵だけで、やむなくこの絵を購入した。
ところで私は昭和55 年春に、弁護士会から国選事件で鹿児島の夫婦殺人事件の上告審を割当てられた。被告人は当初から無罪を主張していたが、一審も二審も有罪で、被告人にとっては最後の望みは最高裁のみとなっていた事件である。この事件のため私は、平成6 年まで15 年間も鹿児島に通うこととなった。刑事事件は無罪。国家賠償も認められた。そして最後の頃に桜島の展望台に行ったところ、ここからの桜島山の姿が、家に掲げている「山の絵」そのままであった。買った絵は鹿児島の桜島山のそれであったのである。


