弁護士 村山 裕

 昨年は、初夏の頃から全国各地でクマが人里に現れ始め、中山間地のみならず市街地や県庁所在地の繁華街にまで出没し、深刻な人身被害とともに社会不安をもたらしました。
一昨年度(2023年度)にも、昨年ほどではなかったものの同様のことが起こり、鳥獣保護管理法改正で、クマなどの危険鳥獣が日常生活圏に侵入し生命・身体への危害防止が緊急に必要な場合に、市町村長が「銃猟」(猟銃で駆除する)を委託実施する「緊急銃猟」制度を設け昨年9月に施行されました。住宅集合地域での「銃猟」禁止で警察官の命令や刑法の緊急避難によるほかなかった点の一部解禁でした。
 しかし、「緊急銃猟」は、銃猟以外の方法での捕獲(箱ワナや麻酔銃などによる)が困難で、地域住民に弾丸到達の恐れがないなど要件が厳しい上、安全確保のための通行制限・避難指示や様々な事前準備が求められ、市町村の負担は厖大です。自衛隊による後方支援や警察官のライフル銃使用体制採用なども行われましたが、不安解消の決め手とはいえないようです。
 日本の陸上生態系の頂点にあるクマ類は、森林活用の変化や人の生活圏の拡大などで生息域が限られてきた経緯もあり、保護する「コア生息地」、人間活動を優先する「防除地域」・「排除地域」、これらの間の「緩衝地帯」とするゾーニング(区分)で、クマ類の生息域を「コア生息域」と「緩衝地帯」に限定する施策がとられてきました。
 現状では人の生活圏での駆除は必須でしょう。しかし、緩衝地帯を確保し誘因果樹を除去するなどゾーニングを徹底した地域での出没数減少例もあるようで、「正しく恐れ・冷静な警戒・対処」を心掛けていきたいものです。