弁護士 加納 力

 

 第3次新横田基地公害訴訟が新たに始まりました。

 前回「横田基地公害訴訟が始まります」という記事を寄稿したのは2013年の正月号(69号)でした。この年の3月に東京地裁立川支部に提訴した「第2次新横田基地公害訴訟」では、過去の裁判より賠償額が増額されたものの、賠償は審理終結までの期間で打ち切り、騒音被害の軽減につながる飛行制限も認められず、他方で、訴訟係属中に垂直離着陸機オスプレイが正式配備されたり、訓練飛行が増加するなど、基地周辺の生活環境への影響は増大しています。
 2020年12月の最高裁判決で訴訟はひと区切りとなり、昨年新たに第3次新横田基地公害訴訟に向けて原告募集を開始、今年6月20日の提訴では約1300名が第1陣原告として名を連ねました。今後追加提訴も予定しています。

 請求内容は、軍用機の午後7時から午前7時までの飛行制限、オスプレイの終日飛行制限、さらに騒音被害が続く限り継続して賠償されることを求めるものです。

 そもそも、横田基地の騒音は最高裁判所でくり返し違法性が認定され、国に対して周辺住民への賠償が命じられてきました。この判断基準は横田基地だけでなく、厚木、小松、嘉手納、普天間、岩国、新田原といった全国の基地訴訟に共通するものです。折しも防衛予算の増額が問題となっていますが、まずは基地周辺住民に対する補償制度を整えることが、法治国家としての最低限の務めでしょう。最高裁判決が無視され、国を相手に何度も裁判をしなければならないこと自体が問題なのです。