弁護士 加納 力

 2011年3月11日午後2時46分、東北地方太平洋沖を震源とするM9の巨大地震が発生、ほどなく東京も震度5強の強い揺れに襲われ、私たちの事務所も棚から飛び出した書類の波で埋め尽くされました。

 あれから10年、震災や津波の被害を受けた地域では復興に向けた取り組みが進められていますが、いまだ復旧レベルにも達していない地域もあるようです。特に、福島第一原発の事故による放射能汚染は深刻で、今も帰還困難区域は広範囲にわたっています。復興五輪の看板を掲げて招致した東京五輪も、コロナ禍もあって文字通り看板倒れになりそうな様相で、「アンダーコントロール」としていた放射能汚染水を「処理水」として海洋放出することを決めたのが震災後10年の節目というのは、何とも皮肉なものです。

 復興途上にあって10年という数字は一つの目盛りに過ぎません。区切りのはずが「見切り」をつけてしまわないように気を付けなければいけません。