勤務先のサービス残業の実態をSNS上でつぶやいていたことが会社にバレて処分されそうです。会社の悪評とはいえ、本当の事をつぶやいただけなのに、処分されてしまうのでしょうか。

 

 

 今やスマートフォン一つで簡単に世界に情報発信できる時代ですが、その便利さとは裏腹に、トラブルのきっかけになることも忘れてはいけません。

 一般論として、会社の悪評などをSNSなどで発信した場合、会社の社会的信用が損なわれたり、求人活動に悪影響をもたらしたり、極端な場合には売上や株価にも影響することがあります。会社としては、企業の秩序を維持するため、発信した従業員を特定して懲戒処分を検討することになります。根も葉もない噂を流されて、倒産の危機に晒されるような例を考えれば、解雇を含めた処分さえ許されることもありえます。悪質性が高い場合には、民事責任(損害賠償)や刑事責任(名誉毀損罪、業務妨害罪など)を問われることも考えられます。

 しかし、会社内で違法行為が行われていることを隠蔽するための懲戒処分は、社会的には許されません。企業秩序を維持するためといっても、「ブラック」な秩序まで維持される理由はないのです。労働契約法15条は、形式的には懲戒処分ができる場合であっても、行為の性質や態様その他の事情に照らして、懲戒処分が客観的合理性を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、懲戒権の濫用として無効となるとしています。

 一口に「サービス残業」と言っても、職場の悪習としてのダラダラ残業とずさんな労務管理(もちろん、それらも改善されるべきですが)から、故意による悪質な無給残業強要と残業隠しのような例まで様々です。あなたの職場のサービス残業の実態がどのようなものか分かりませんし、つぶやきの目的や内容、頻度なども分かりませんが、仮に、企業名が明らかになって「炎上」状態になったとしても、悪質な違法状態の告発の目的で行われたもので、懲戒処分が告発つぶしとして行われるような場合は、懲戒権の濫用に当たると考えられます。

 なお、SNSでの発信が就業時間中に頻繁に行われ、それ自体が業務に差し支えたり、結果的に残業を招いているようなことがあると、かえって懲戒の対象となるかも知れません。本当に匿名告発を考えるのであれば、SNSよりもっと確かな方法があります。安易なつぶやきにはご注意ください。