[特集 平成の思い出]

弁護士 渕上 隆

 平成が始まった1989年1月、私は大学1年生でした。ストで学年末試験を潰したいという不純な動機から、早稲田では年度末近くになると俄に学費値上げ反対運動が盛り上がるのでした。そうした1月のある日、学生集会で演壇に立った学生の「20年前の今日、東大安田講堂が陥落した」といった演説を聞き、自分が生まれる前の遙か昔の話をしているなと思ったことを覚えています。

 物心ついたときからの東西冷戦と万年与党の自民党政権は永遠に続くように感じられました。時はバブル真っ盛りで、就職の心配はなく、大学の4年間は“ジャパニーズ・ビジネスマン”になるまでのモラトリアム期間でした。ところが、11月にはベルリンの壁が崩壊し、あっけなく東西冷戦は終わりました。数年後にはバブルが崩壊し、自民党も野に下りました。その後の歴史の変転は皆さんご存じのとおりです。

 1989年から30年以上経ちましたが、つい最近のことのように感じます。光陰矢のごとし。諸行無常。それが今の思いです。