去る5月14日、政府が2013年から3年間にわたり行った生活保護基準の引下げは生存権を保障した憲法25条に違反するとして、39名の生活保護利用者が、東京地裁に提訴しました。同種の訴訟は既に東京を含む全国で起こされており、本提訴により全国の原告数は1000名を超えました。
2012年、当時野党であった自民党は、芸能人の母親の生活保護の「不正受給」問題(実際は不正受給ではありません)などを利用して、生活保護バッシングを煽り、生活保護費10%カットを公約に掲げて選挙を行いました。そして、政権に復帰すると翌年から公約どおり生活保護基準を引下げました。しかし、「健康で文化的な最低限度の生活」を営む権利は憲法が保障する基本的人権であり、政権与党の選挙公約であっても、これに反して生活保護基準を引き下げることは許されません。ところが、政府は、生活保護基準に関する専門機関の検討結果を逸脱し、基準引下げを正当化するための“データ偽装”まで行って、基準引下げを強行したのです。
生活保護基準は、憲法が保障する「最低限度」の生活の指標であり、最低賃金や地方税の非課税基準、就学援助の給付対象基準など様々な制度とも連動しています。その基準の引下げは、自らは生活保護を利用しておらず、「生活保護利用者は優遇されている」と誤解している人たちの生活にも大きな影響を及ぼします。政府は、今年度から、更なる生活保護基準の引下げを予定していますが、こうした誤った政策に歯止めをかけるためにも、司法が人権保障機関としての本来の役割を果たすことが期待されます。