弁護士 村山 裕

 昨年秋、「たたかない、怒鳴らない子育て」の推進に取り組んでいるセイブ・ザ・チルドレン・ジャパンの主催で、日弁連も共催してのシンポジウム「子どもに対する体罰などの禁止に向けて」がありました。

 学校や施設での体罰や虐待は禁止されていますが、家庭の子育てでは虐待は別として、体罰を禁ずる法律がなく、しつけのために子どもをたたくことに六割が肯定的との調査もあり、こうした社会意識から学校や施設でも体罰がなくならないといわれていました。

 しかし、体罰や暴言は、子どもの尊厳を傷つけ、子どもの発達に負の影響を与える科学的根拠も解明されていると、体罰の全面禁止の法制化を訴えるものでした。

 最近の脳科学の成果として、体罰や暴言、DVの目撃など、不適切な養育は、脳の前頭前野、聴覚野、視覚野などに発達上の負の影響をもたらし、感情や意欲、聴こえや視え方が制約され、一見、いわゆる「発達障がい」の症状が顕れ、成人後にもフラッシュ・バックで抑うつ症状などが出て、世代間連鎖も見られるという児童精神科医のお話は、衝撃的でした。

 手を上げたり怒鳴ったりせず、したい放題にさせるわけでもない「ポジティブ・ディシプリン(前向きなしつけ)」を実のある子育て支援とともに行う社会にしたいという願いが伝わりました。

 最近、政権与党内から「家庭教育支援法案」などという剣呑な動きもありますが、これとは正反対の取り組みとして、皆さんにお伝えしたいと思った次第です。