弁護士 斉藤 豊

 昨年秋の衆議院総選挙は、与党勢力が「改憲発議可能な絶対多数」の議席を獲得し、支持率が低迷していた安倍内閣の継続を承認する結果となりました。自民党が議席を減らすという選挙戦前の予測からすると、安倍首相としては作戦勝ちといってよいものです。しかし、選挙結果が憲法改正問題にも大きな影響を与えるものであることを考えると、今回の解散・総選挙には憲法との関係で大きな問題があったことが改めて思い起こされます。野党が請求していた臨時国会の招集に応ずることなく、党利党略で解散権が行使されたという問題です。

 森友・加計学園問題での審理のため野党が求めていた臨時国会は、憲法上、内閣にこれを拒む権限はありませんでした。また、内閣に認められた解散権の行使に憲法上明文の制約はありませんが、党利党略等の恣意的理由から解散権を行使することは憲法上許されません。今回の解散・総選挙はこの2点において憲法上明らかに疑義あるものでした。

 「国難解散」という安倍内閣の説明はいかにもこじつけでした。総理への疑惑追及をかわすとともに、「希望の党」など野党再編の準備不足をにらんだ一方的な解散は、民意を問うというよりも、解散権を自党にもっとも有利なタイミングで使うといった観点が色濃く出たものでした。大義のない解散と言われたゆえんです。

 自民党の絶対得票率は小選挙区では25%、比例区では17%に過ぎません(得票率自体は48%)。選挙制度や野党の分裂に助けられた今回の結果を単純に民意とみるのには抵抗があります。しかし、それ以前の問題として、今回の解散・総選挙が、そもそも、憲法上の義務に反して内閣が行った議会(=民意)への掣肘であったという事実を忘れてはならないでしょう。