外国人技能実習制度は、開発途上国の人材育成支援という国際貢献の名の下に行われて来ました。もちろん、理念どおりに技能実習が行われるのであれば、我が国がもっとも得意としてきた「ものづくり」の技術を諸外国に広める平和的な国際貢献として評価されるべきものです。実際に、多くの受入れ企業では、継続的に外国人実習生を受け入れ、人材育成に貢献しているのです。
 しかし、一部には、外国人実習生を安い労働力として使いたい受入れ企業や、中間搾取をもくろむ送出し機関(外国側)が存在するのも事実で、低賃金で長時間に及ぶ労働を実習生に強いている例もあり、他方で、実習生の中にも初めから出稼ぎと割り切って入国する者もいて、残業を制限されることの方を嫌がるといったこともあるといいます。
 もっと悪質な例では、割のいい別の仕事を見つけて逃亡してしまう実習生や、それを手引きするブローカーなどもいて、こうなると実習制度は就労目的の入国の口実に利用されていることになります。
 こうした外国人技能実習制度の実態は国際的にも非難されており、日弁連でも、早急な制度廃止を求める意見書を政府に提出していますが、将来の労働人口の減少を補うために外国人労働者の受入れを考える立場から、外国人技能実習制度の問題を、監督機関の権限強化などによって改善し、むしろ介護分野などにも拡大していこうとする動きがあることは、報道等でご存知と思います。
 これらの背景には、入管行政を所管する法務省(入国管理局)と労働行政を所管する厚生労働省との綱引きも見え隠れします。問題改善の名目で、行政が焼け太りすることもまた問題とすべきではないでしょうか。